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【民事信託】信託財産である不動産を売る際について

不動産登記

 司法書士ライターのTです。

 今回は、民事信託(家族信託)において、信託財産にした不動産を売却する場合について解説していきます。

 民事信託(家族信託)は、家族間で信託契約を結び、財産(お金や土地、家など)の管理や運用を行います。そして、信託とは財産の管理や承継のための制度です。財産を持つ人がその財産の管理を信頼できる家族に託すことで、財産承継のトラブルを防ぎます。

 民事信託のおおまかな概要は前回の記事をご参照ください。

 民事信託は受益者(利益をもらう人)のためにある制度です。仮に委託者兼受益者である本人が認知症になってしまった場合でも、代わりに受託者となった家族が財産を管理できるというのが信託です。受託者となった家族が自身のために信託財産を売るのは信託という制度の趣旨に沿った利用方法ではありません。今回の記事も信託財産である不動産を受益者のために売るという前提で記述しています。

 信託財産が不動産である場合、まず信託の登記をします。ただし不動産が農地である場合は信託の登記ができませんので注意が必要です。

 信託の登記は、受託者(家族など)を所有者とする所有権の登記と、信託の登記を申請します。名義人は受託者となりますが、同時に信託の登記をすることで、受託者の債権者などに対し、「信託したものだ」との主張ができます。

 信託がされた後に受託者が死亡した場合でも、相続登記はしません。名義人は確かに受託者ですが、相続財産とはならないためです。

 売却した場合は、その不動産については信託の登記の抹消が必要です。「所有権移転及び信託登記抹消」を原因として、その不動産を買った人への登記名義変更と、信託の登記の抹消を申請します。

 ここで、宅地建物取引業の免許が必要か否かが問題になります。

 宅地建物取引業とは、宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいいます。そして宅地建物取引業を営もうとする場合は、国土交通大臣又は都道府県知事の免許を受けなければなりません。

 そして、その信託財産となった不動産を売る場合に、それが宅地建物取引業にあたるかどうかについても問題となります。

 基本的に1回限りの売却であればあたらない可能性が高いといえます。一方で、例えば信託財産がマンション1棟で、各部屋ごとに不特定多数に売っていくという場合、「業として行うもの」にあたる可能性が高くなります。

 宅地建物取引業の免許を受けずに宅地建物取引業を営んではなりません(宅建業法12条1項)。そして、無免許で行うと3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられ、またはこれらを併科される可能性があります。

 次に、信託財産となっている不動産に抵当権や根抵当権(どういう権利かについてはこちらの記事を参照)がついていた場合、売却する前提として抹消する必要があります。抵当権や根抵当権がついている不動産はそのままでは買い手がつきません。民事信託の場合に限らず、通常の売買であっても同様です。抵当権や根抵当権がついていると、これらが実行されて、競売される恐れがあるためです。

 ざっくりとした解説となりましたが、今回は以上となります。

◆まとめ

受託者自身の利益のために売却するのは制度趣旨に反する

宅地建物取引業にあたるかどうか注意

抵当権や根抵当権がある場合は前提として抹消が必要

 今回は以上となります。

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