司法書士ライターのTです。
突然ですが、労働者協同組合という法人を知っていますか?法人の種類といえば、代表的なものでいうと株式会社や一般社団法人、NPO法人、医療法人などがあります。近年、新たにそこに加わったのが労働者協同組合です。令和4年に新たに日本でも設立できるようになりました。労働者が出資し、経営に参加しながら働く組織です。今回は、最近注目されているこの労働者協同組合について、その仕組みや特徴、メリット・デメリットを解説します。
労働者協同組合とは?
労働者協同組合とは、労働者協同組合法によって設立される法人で、組合員が出資し、組合員の意見が適切に反映して事業が行われ、組合員自らが事業に従事することを基本原理とします。この基本原理に従い事業が行われることを通じて、持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とするものでなければなりません。
そして、働く人々が主体となって事業を運営します。一般的な企業と異なり、出資者(組合員)が同時に労働者でもあり、経営にも関与する点が特徴です。令和4年に施行された労働者協同組合法によって設立される法人です。
労働者協同組合の仕組み
労働者協同組合の基本的な仕組みは以下の3つの原則に基づいています。
組合員の出資
労働者協同組合では、働く人々が自ら資金を出し合って組合の経営をし、組合の事業に従事します。株主になると、自動的にその会社の従業員になるイメージです。
一方で一般的な株式会社では、株主になったからといって会社の従業員になるわけではありません。
組合員による民主的な運営
意思決定は「一人一票」の原則に基づきます。出資額の大小に関わらず、すべての組合員が平等に経営に参加できる点が特徴です。一般企業では株式の保有割合によって経営への影響力が決まることが多いですが、労働者協同組合では全員が対等な立場で運営に関わります。
組合員自らが事業に従事
上でも解説しましたが、組合員は単なる投資家ではなく、従業員となり実際にその事業で働くことが求められます。これが労働者協同組合の大きな特徴です。そのため、労働者としての視点を重視しながら、事業の運営方針を決めることができます。
労働者協同組合のメリット
労働者協同組合には、以下のようなメリットがあります。
働く人が主体となるため、やりがいを感じやすい
経営に関与できるため、自分たちの働き方を自由に決められます。やりがいを持って働きやすい環境が整います。
一般的な株式会社では経営に関与するのは社長や会長、取締役などの偉い人たちです。
一方で労働者協同組合はその企業の従業員全員が偉い人になるというイメージです。
利益追求だけでなく、社会的な価値を重視できる
会社のような運営だけでなく、地域貢献や福祉、環境保護など、社会的な目的を重視した事業運営が可能です。NPO法人のようなボランティア活動なども可能です。労働者派遣事業などのごく一部を除き、どのような事業も可能です。
民主的な運営が可能
一般企業では経営陣が大きな決定権を持ちますが、労働者協同組合ではすべての組合員が意思決定に関与でき、公平な組織運営が可能です。
労働者協同組合のデメリット
一方で、労働者協同組合には以下のような課題もあります。
資金調達が難しい
株式会社のように株式発行で資金を調達することはできず、出資金や融資に頼ることになります。そのため、規模の大きな事業を立ち上げる際には資金面での課題があります。
意思決定に時間がかかる
民主的な運営を行うため、意思決定のプロセスが複雑になり、決定までに時間がかかることがあります。迅速な経営判断が求められる場面では、この点がデメリットとなることもあります。
組合員間の意見の対立が起こることも
全員が経営に参加するため、意見の対立が発生しやすくなります。適切な合意形成の仕組みを整えないと、組織運営がスムーズにいかないこともあります。
労働者協同組合の将来性
労働者協同組合は新しい法人であり、現時点では日本全国に約100法人ほどしか存在しない状況です。そのため、秘めている可能性はまだまだ未知数です。
海外の労働者協同組合としては、スペインにある「モンドラゴン協同組合」が有名で、世界最大の労働者協同組合といわれます。数万人の組合員を抱える大規模な労働者協同組合として成功を収めています。
労働者協同組合と他の団体・法人との違い
労働組合との違い
労働組合は会社等の労働者で構成され、その会社等における労働条件の改善などを目的としてする団体です。名前は似ていますが、労働者協同組合とは全く異なる性質の団体です。
NPO法人との主な違い
NPO法人(特定非営利活動法人)とは、特定非営利活動促進法(NPO法)によって設立される、特定非営利活動を行うことを目的とする法人をいいます。所轄庁(都道府県または指定都市)の認証を受け、主にボランティア活動などを行う法人です。
設立する目的は労働者協同組合とNPO法人とでよく似ています。
労働者協同組合とNPO法人の比較
・NPO法人は所轄庁の認証を受けて活動する
NPO法人はその活動について、認証を受けているため労働者協同組合と比べて活動自体の社会的信頼性に勝ります。
・労働者協同組合は許認可は不要
設立の登記のみによって成立する準則主義がとられています。
・労働者協同組合は最低人数は3人で設立できる
NPO法人は設立にあたり10人以上必要です。
・労働者協同組合は活動できる幅が広い
NPO法人は主な活動内容が限定されています。
⇒参考記事:ボランティア活動の幅を広げよう!NPO法人設立のメリットと注意点を解説
・NPO法人は出資はできないが労働者協同組合は出資できる
NPO法人は設立の際、設立者の出資はできません。これは特定非営利活動促進法(NPO法)において、NPO法人は、特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行ってはならないとされているためです。
事業協同組合との主な違い
事業協同組合は企業や事業者が集まって設立し、お互いに扶けあいを行う法人です。
一方で労働者協同組合のように出資者が自動的に組合の事業に従事するわけではありません。よって、事業に従事しない出資者も存在します。
まとめ
労働者協同組合は、働く人々が主体となって経営し、民主的に運営する組織です。特に社会的課題の解決を目指す事業と相性が良く、日本でも今後の発展が期待されています。一方で、資金調達や意思決定のスピードといった課題もあり、組合員同士の協力が重要となります。
労働者協同組合という働き方は、これからの時代に合った新しい選択肢の一つとなるかもしれません。興味がある方は、実際の事例などを調べてみるとよいでしょう。


