家族間や親しい間柄で財産を譲り渡す場面は少なくありません。しかし、贈与手続は思った以上に難しい点があります。
特に土地や建物などの不動産を贈与する場合には、単に「あげます」「もらいます」という口約束だけではなく、法的な手続きや税金の問題が関わってきます。
今回は、贈与の基本的な仕組みから、不動産を贈与する際の登記手続きまでを詳しく解説します。
不動産贈与とは
贈与とは、当事者の一方が自己の財産を無償で相手に与える意思表示をし、相手がそれを承諾することで成立する契約です。
例えば、友人にペットボトルのお茶をあげる(無償で渡す)のは、贈与にあたります。
そして、不動産(土地や家)を無償で渡すことを不動産贈与といいます。
贈与契約は口頭でも成立しますが、後のトラブルを避けるためや名義変更手続きのために、不動産など高額のものを渡すときは贈与契約書を作成することが一般的です。
不動産の場合は、贈与契約のほか、当事者が共同して所有権移転登記を申請する必要があります。
贈与の種類
贈与には、いくつかの形があります。
- 一般の贈与
無償で財産を譲る一般的な贈与。 - 死因贈与
贈与者の死亡を条件として効力が生じる贈与(遺贈に似ていますが贈与契約です)。 - 負担付贈与
財産をあげる代わりに、一定の義務を負わせる贈与(例:家をあげる代わりに、介護をしてもらう)。
贈与に関わる税金
贈与については、税金が課税される場合があります。
贈与税
贈与税とは、個人から財産をもらった人(受贈者)に課される税金です。
贈与税の基礎控除額は110万円で、これは課税価額から控除されます。
贈与税の課税方法には、暦年課税と相続時精算課税があります。
暦年課税
暦年課税とは、1年間に贈与を受けた財産の合計額を基にし、贈与税額を計算するものをいいます。
相続時精算課税
相続時精算課税とは、財産を渡した人(贈与者)から1年間に贈与を受けた財産の合計額を基に贈与税を計算し、贈与者が亡くなった際、相続税で精算するものをいいます。
相続時精算課税は、親子間などの贈与で一定の要件に当てはまる場合に選択できる制度です。
相続時精算課税を選択した後、その贈与者からの贈与を暦年課税に変更することはできません。
不動産取得税
不動産取得税とは、不動産(土地や家)を取得した場合に課税される税金です。
取得時の不動産の価格×4%が基本とされていますが、取得時期によって軽減される場合もあります。
この不動産の価格とは、固定資産評価基準によって決定された価格であり、不動産の売却額や相場価値ではありません。一定の期間内に宅地を取得した場合など、課税標準となるべき価格が軽減されることもあります。
登録免許税
登録免許税とは、所有権移転登記のときに収める税金です。
贈与における登録免許税額は、不動産の価額の2%となります。この不動産の価額は、固定資産評価基準に基づいて評価された額をいい、売却額や相場価値ではありません。
不動産の贈与登記手続きの流れ
ここでは、不動産の贈与による所有権移転登記について簡単に解説します。
必要書類
以下のものが必要です。
- 登記申請書
- 贈与契約書または登記原因証明情報(実印押印)
- 登記識別情報または登記済証(権利証)
- 贈与者(渡す人)の印鑑証明書(発行から3か月以内のもの)
- 受贈者(もらう人)の住民票
- 委任状(司法書士への委任状)
- 固定資産評価証明書(市区町村役場で取得)
上記の「登記原因証明情報」とは、登記の申請のために作成した原因証書をいいます。
当事者に法人がいるときは、会社法人等番号を記載する必要があります。
贈与者(渡す人)の登記記録上の住所が、現住所と異なる場合、前提として贈与者の住所変更登記を申請しなければなりません。
登記の申請先
不動産所在地を管轄する法務局に申請します。
管轄外の法務局に登記を申請すると却下されます。
登録免許税
贈与の場合の登録免許税は、課税価額(固定資産税評価額)の2%です。売買とは違い、土地を贈与する場合でも軽減措置はありません。
贈与の手続きの流れ
おおむね以下の流れとなります。
- 贈与契約の締結
- 必要書類の準備
- 登記申請書の作成
- 法務局へ申請(窓口または郵送)
- 登記完了後、登記完了証と登記識別情報通知を受領
贈与の注意点
- 贈与契約が成立しても、登記をしないと第三者に所有権を主張できません。
- 贈与税の申告は、申告期間内(翌年の2月初めから3月中旬まで)に行う必要があります。
- 相続税対策で贈与を行う場合、贈与税に注意が必要です。
- 贈与税等の対策として贈与であるにもかかわらず、不当に安い額で売ったことにすることはできません。
まとめ
贈与は身近な財産移転の方法ですが、不動産を伴う場合は税務・登記の両面でしっかりした準備が必要です。
贈与税の申告が必要な場合は、その申告期限は守らなければなりません。
登記手続きでは、必要書類等をきちんとそろえる必要があります。また、贈与者の住所が登記記録と異なる場合は、前提となる登記の申請も必要となります。
贈与契約自体は無償でも、税金などの負担が発生する可能性がある点には注意しましょう。
このように、贈与手続にあたって専門知識が必要となるため、贈与を検討している場合は、司法書士や税理士に相談することを強くお勧めします。


