会社を設立したり、役員が変わったりしたときには登記の申請が必要となります。そして、会社において必要となる登記は「商業登記」と呼ばれています。
では、実際にどのような仕組みで、どのような目的で行われているのか、ご存知でしょうか?
今回は、商業登記の制度の概要から、主にどのような情報が登記されるのか、登記の効果や重要性まで、わかりやすく解説していきます。
商業登記とは?
商業登記とは、会社法等の法律の規定により登記すべき事項を公示するための登記に関する制度について定めることにより、商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資することを目的とする制度です。
分かりやすく言うと、会社や商人に関する一定の情報を、法務局の登記簿に記録し、社会に公示する制度です。
商業登記制度の目的は、取引の安全と信用の確保にあります。
会社の情報を誰でも閲覧できるようにすることで、取引相手の実在性や信用度を確認でき、無用なトラブルを防ぐことができるのです。
取引の安全とは、取引を行った者の利益を保護することです。
商業登記の仕組み
商業登記の基本的な流れは、以下のとおりです。
①登記事由の発生
登記が必要になる事由(例:会社設立、代表取締役の変更、本店移転など)が発生します。
②登記申請
会社の代表者や代理人(司法書士)が、登記申請書や添付書面などの所定の書類を作成したうえで法務局に提出し、登記申請を行います。
株式会社においては、①登記事由の発生から一定の期間内に登記を申請しなければならない旨が定められています。
③受付・登記官による審査
登記の申請を受けた法務局の登記官が内容を審査し、適法と判断された場合に登記が完了します。
もし不備などがある場合、補正となったり、登記の申請が却下される可能性もあります。
④登記情報の公示
登記が完了すると、その内容が登記簿謄本やインターネットを通じて第三者にも開示されるようになります。
登記される主な情報
会社の種類によって多少異なりますが、株式会社を例にすると、以下のような情報が登記されます。
- 商号
- 本店所在地
- 目的
- 公告をする方法
- 発行可能株式総数
- 資本金の額
- 株式の譲渡制限に関する規定
- 役員の氏名
- 代表取締役の氏名・住所
- 支店
- 取締役会設置会社に関する事項
- 監査役設置会社に関する事項
- 監査等委員会設置会社に関する事項
- 設立日
- その他、合併・解散などの事項
上記は一例です。これ以外にも登記される事項は多数あります。
これらの情報は、誰でも取得可能な「履歴事項全部証明書」などで公にされます。
商業登記の法的効果
商業登記は、単なる情報公開のためだけではなく、法律上の効果も持ちます。
■ 対抗力(第三者に主張できる)
商業登記には対抗力があります。
会社法の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
つまり、登記すべき事項のうち、実際に登記の申請を行い、登記された事項については、第三者に対してその内容を主張することができます。
「正当な事由によってその登記があることを知らなかったとき」とは、例えば交通の途絶で商業登記を確認することが一切不可能な状況などを指します。実務上、この「正当な事由」はかなり狭く、ほぼないと言ってよいです。
■ 不実の登記
故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができません。
善意の第三者とは、その事実を知らないことを指します。例えば、ウソの登記をした場合において、その登記がウソであると知らない人に対しては、「この登記はウソですよ」とは言えないということです。
登記が義務づけられている理由
前述のとおり、商業登記制度の目的は、取引の安全と信用の確保にあります。しかし、登記すべき事情が発生したにもかかわらず商業登記がされないと、取引の安全と信用の確保ができなくなり、商業登記制度の目的が果たせなくなってしまいます。
たとえば、会社の代表者が変更されたのに、その情報を登記せず放置していた場合、取引先が誤って旧代表と契約してしまう可能性があります。
このようなトラブルを防ぐために、会社に関する変更は、一定期間内に登記を行う義務が課されています(一般的には2週間以内)。
登記懈怠と過料
前述のとおり、会社に関する変更は、一定期間内に登記を行う義務が課されていますが、正当な理由なく登記の申請を怠ると過料の制裁を受けます。
よくある過料対象の事例
| 登記すべき事由 | 登記期限 |
|---|---|
| 取締役・代表取締役の変更 | 変更が生じた日から2週間以内 |
| 監査役の変更 | 変更が生じた日から2週間以内 |
| 会計監査人の変更 | 変更が生じた日から2週間以内 |
| 会社の目的変更 | 変更が生じた日から2週間以内 |
| 商号の変更 | 変更が生じた日から2週間以内 |
| 資本金の額の減少 | 変更が生じた日から2週間以内 |
特に、取締役、監査役などの役員については、登記の申請漏れが多いです。取締役の任期が過ぎていたのを見過ごしていたりするケースがみられます。また、会計監査人の自動再任に関しての登記が申請されていないケースなどもあります。
過料の金額
会社法上は100万円以下の過料と規定されています。
- 実際は数万円程度であることも多いですが、事案や遅延期間によっては10万円以上になることもあります。
- 金額は会社の規模や遅延の程度などを踏まえて、法務局が裁量で判断します。
なお、この過料は行政罰であり、刑事罰ではありませんので、仮に過料に処せられたとしてもいわゆる「前科」はつきません。
会社法上にも刑事罰の規定はあります。特に注意が必要なのが、株式の超過発行の罪です。株式会社の発行可能株式総数を超えて株式を発行したときは、5年以下の拘禁刑(※令和7年5月31日まで懲役)又は500万円以下の罰金に処せられることがあります。これは刑事罰であり、「前科」がつきます。株式の枠外発行は犯罪だという認識がない方は非常に多いので、株式を発行する際は十分注意が必要です。
商業登記と司法書士
商業登記には、法律や書類作成に関する専門知識が必要です。
そのため、多くの会社では司法書士に登記手続きを依頼しています。
また、司法書士のサポートを受けることで、上記の登記懈怠についてもアナウンスを行ってくれます。
司法書士は、会社の状況に応じた登記内容のアドバイスから、申請書類の作成、法務局への提出までを一括で代行します。
まとめ
商業登記は、会社の情報を社会に公示することで、取引の安全を確保し、経済活動を円滑にする重要な制度です。
商業登記の過料は「うっかりミス」に対しても容赦なく科される場合があるため、軽く見るべきではありません。
役員変更や本店移転などの会社内部の動きがあった際は、登記義務の有無と期限を必ず確認するようにしましょう。
商業登記は、単なる法律上の義務であるだけでなく、会社の信用を守るためにも、正確で迅速な登記が欠かせません。


