法人登記を苦手とする司法書士の先生が多いのは、法人登記に関する法令が複雑なのも理由との一つといえます。法人登記は商業登記とは異なり、1つにまとめた「法人登記法」というようなものは存在せず、各種の法令に規定が置かれています。
その法令のうち、「組合等登記令」とは、特定の法人について登記の手続を定めた政令です。通常の商業登記とは異なり、会社法上の会社ではない各種法人がこの令に基づいて登記されます。具体的には、医療法人や学校法人、社会福祉法人、NPO法人などが対象となります。
今回は、組合等登記令で登記する法人や、その他法人登記について解説していきます。
組合等登記令にて登記する法人
組合等登記令とは、一定の法人の登記手続きを定めた政令です。
組合等登記令にて登記する法人は?
組合等登記令1条において、別表の名称の欄に掲げる法人(以下「組合等」という。)の登記については、他の法令に別段の定めがある場合を除くほか、この政令の定めるところによる。と規定されており、組合等登記令にて登記するかどうかは、別表を見ればわかります。
そして、この別表は五十音順に並んでいます。
当ブログで紹介した法人のうち、組合等登記令にて登記する法人は以下のとおりです。
- 医療法人
- 学校法人
- 私立学校法第百五十二条第五項の法人(準学校法人)
- 管理組合法人
- 団地管理組合法人
- 漁業協同組合
- 社会福祉法人
- 社会保険労務士法人
- 商店街振興組合
- 森林組合
- 税理士法人
- 特定非営利活動法人(NPO法人)
- 農事組合法人
- 労働者協同組合
当ブログ内にて該当の法人の記事を読まれたい方は、ブログ右側(スマートフォン版ではサイト下側)にある検索欄にて、上記の法人を入力することで記事の検索が可能です。以下、本記事で登場する法人も同様に検索可能です。
これらの法人は、それぞれ設立根拠となる法律に基づいて法人格を取得しますが、登記手続きに関する規定が根拠法に置かれていません。登記手続きはどこで規定しているかというと、組合等登記令に従って行うことになります。
組合等登記令は会社でいう「商業登記法」にあたります。では、「商業登記規則」にあたるものはどれかというと、各種法人等登記規則が該当します。
会社、一般社団法人及び一般財団法人、投資法人、特定目的会社を除くその他の法人並びに外国会社を除くその他の外国法人の登記手続きは、各種法人等登記規則によることになります。
組合等登記令における登記事項
組合等登記令の適用のある法人における登記事項は以下のとおりです。
- 目的及び業務
- 名称
- 事務所の所在場所
- 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
- 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
- 別表の登記事項の欄に掲げる事項(資産の総額、代表権の範囲又は制限に関する定めなど、法人によって異なる)
これは、医療法人、学校法人、NPO法人など組合等登記令の適用のある法人は基本的に上記の事項を登記することになります。登記の申請は、商業登記と同様でその法人の主たる事務所の所在地を管轄する登記所(法務局)に対して行います。
法人の根拠法にて登記する法人
上記の「組合等登記令にて登記する法人」に該当しない法人においては、根拠法令において、登記手続きが法人の根拠法令に規定されている法人である可能性があります。
当ブログで紹介した法人のうち、法人の根拠法にて登記する法人は以下のとおりです。
その他法人
- 事業協同組合
- ⇒中小企業等協同組合法
- 企業組合
- ⇒中小企業等協同組合法
- 宗教法人
- ⇒宗教法人法
- 政党
- ⇒政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律
- 商工組合
- ⇒中小企業団体の組織に関する法律
一般社団法人・一般財団法人
一般社団法人・一般財団法人は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律において登記手続きの規定があり、法人の根拠法にて登記する法人の仲間です。ただし、会社でいう「商業登記規則」に相当する分が他の法人と異なり、各種法人等登記規則ではなく一般社団法人等登記規則が適用されます。
公益社団法人・公益財団法人も一般社団法人・一般財団法人の一つであるため、こちらのグループに含まれます。
組合等登記令以外の政令にて登記する法人
ここに該当する法人は、登記手続きに関する規定が根拠法に置かれていません。そして、登記手続きは組合等登記令ではない別の政令に従って行うことになります。
当ブログで紹介した法人のうち、組合等登記令以外の政令にて登記する法人は以下のとおりです。
- 法人である労働組合
- 労働組合法⇒労働組合法施行令
設立にあたって登記を要しない法人
登記をしなくても設立される法人も存在します。
当ブログで紹介した法人のうち、設立にあたって登記を要しない法人は以下のとおりです。
- 相続財産法人
- ⇒民法951条
- マンション建替組合
- ⇒マンションの建替え等の円滑化に関する法律
これらの法人は法人登記の申請は不要ですが、不動産登記の申請は必要になるケースがあるため注意が必要です。
まとめ
法人登記に関する法令はかなりややこしいことになっています。
司法書士の先生方においては一般社団法人・一般財団法人以外の法人登記を受任した際は、
①組合等登記令の適用はあるか⇒②法人の根拠法令に登記に関する規定はあるか⇒③その他特殊な法人か
というような順番でみていくとよいでしょう。上記の「②法人の根拠法令に登記に関する規定はあるか」までにはほとんどの法人が該当するはずです。「③その他特殊な法人か」までいく法人はかなり珍しいです。
法人登記をこなすには対象となる法人を正しく理解し、法令に則った登記を行うことが求められます。そのため、法人登記を苦手とされる司法書士の先生も多いです。
当初は法人登記が専門分野であり、司法書士の先生に依頼を断られてしまった方からのご依頼ももちろん対応いたします。


