社会福祉法人は、公益性の高い福祉サービスを提供する非営利法人ですが、その運営にあたっては厳格な会計処理と財産管理が求められます。そのうち、法人の資産や負債等の状況は、健全性や事業の継続性を判断するうえで極めて重要な指標となります。そのため、「資産の総額」を登記しなければなりません。
今回は、社会福祉法人における「資産の総額」の定義や意義などをわかりやすく解説します。
「資産の総額」とは?
「資産の総額」とは、社会福祉法人が所有するすべてのプラスの財産(資産)から、マイナスの財産(負債)の合計額を指します。つまり、貸借対照表における資産の部から負債の部の額を引いた額が「資産の総額」となります。
資産の部には、社会福祉法人が有する現金や預金、不動産、備品、投資有価証券、未収金などが含まれ、負債の部には、借入金や未払金などが含まれます。
「資産の総額」というと、貸借対照表の資産の部の合計額であると思われがちですが、「資産の総額」の総額として登記するのは、資産の部から負債の部を引いた額です。資産の部の合計額だけではありませんので注意が必要です。
なぜ「資産の総額」が重要なのか?
社会福祉法人において資産の総額が重要視される理由は以下のとおりです。
基本財産の確保と維持の判断基準
社会福祉法人は、社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければなりません。このように資産の維持管理が義務付けられています。資産の総額が大きく変動していれば、財務的な健全性に問題がある可能性があると見なされます。
行政の監査や報告義務に影響
都道府県や厚生労働省は、資産の総額を含む財務諸表をもとに、法人の適正な運営を監督します。毎年の決算報告や事業報告においても、資産の総額は重要なチェックポイントです。
他の指標の基礎数値になる
たとえば、「社会福祉充実計画」の策定要否や、「公益的な取組の実施」を判断する際にも、資産の総額が関係します。
資産の総額の構成内容
「資産の総額」には以下の項目が含まれます。
| 資産項目 | 内容例 |
|---|---|
| 現金及び預金 | 銀行預金、手元現金など |
| 未収金・前払費用 | 利用者からの未収金、前払費など |
| 有価証券 | 長期保有株式、投資信託等 |
| 建物、土地、設備 | 自己所有の建物・設備・土地 |
| 備品 | 車両、什器備品など |
| 負債 | 借入金、未払金など |
上項で解説した通り、貸借対照表における「資産の部」の合計額を示すわけではない点には注意が必要です。
「資産の総額」に関連する注意点
基本財産とその他財産の区別
社会福祉法人の資産は、「基本財産」と「その他の財産」に分けられます。基本財産は原則として処分・転用が禁止されており、法人の基盤資産として重要です。
- 基本財産:施設用地や施設建物など、社会福祉法人の事業継続に不可欠な資産
- その他財産:運転資金や事業収益で得た流動資産など
この分類を明確にしておくことが非常に重要です。
減価償却資産の処理
建物・設備などの固定資産は、減価償却後の帳簿価額で記載されます。適切な減価償却を行わないと、資産の総額が過大に計上されてしまい、誤った財務状況を示すおそれがあります。
社会福祉法人の財産状況公開
WAM NETでの財産状況報告
WAM NETとは、独立行政法人福祉医療機構がインターネット上で運営している福祉や医療等に関する総合情報提供WEBサイトです。
社会福祉法人は、計算書類や現況報告書などを「WAM NET(福祉・医療機構)」で公開します。これらについては社会的な説明責任が伴います。
外部の関係者(家族、利用者、取引先など)も閲覧できるため、資産の総額の信頼性は法人経営の信用にも直結します。
社会福祉法人の登記記録
社会福祉法人においては、「資産の総額」として、財政状況が登記記録においても公開されています。そして、この登記記録は、手数料を支払うことで誰でも取得できます。
資産の総額の登記の申請はいつまでに必要?
社会福祉法人において、資産の総額の変更の登記は、毎事業年度末日現在により、当該末日から3か月以内に変更登記を申請しなければなりません。
毎年、変更登記を申請しなければならない点には注意が必要です。登記を申請しないと、登記懈怠となり過料の対象となる可能性があります。
まとめ
社会福祉法人における「資産の総額」は、法人の財務状況を示す根幹の数値であり、会計処理や行政報告、社会的信頼に大きく関わる重要な項目です。
以下の点を押さえておくことが肝心です。
- 資産の総額=貸借対照表の資産の部と負債の部の合計
- 基本財産とその他財産の区分が重要
- 減価償却や未収金の処理など正確な会計処理が求められる
- WAM NET等で外部に公開される
透明性と健全性を確保するためにも、資産管理と会計処理を常に正しく行いましょう。
必要に応じて、法人の設立・運営や会計処理について、税理士や司法書士などの専門家にご相談されることをおすすめします。


