個人の弁護士事務所から「弁護士法人」として法人化することで、業務の幅を広げ、組織的な運営が可能になります。
弁護士は言わずと知れた法律の専門家であり、幅広い法律業務を行います。それでも顧客は個人の法律事務所よりも法人各のある「弁護士法人」より信頼して選ぶことが多いです。
今回は、弁護士法人の設立要件や具体的な手続きの流れ、そして法人化のメリット・注意点について解説します。
弁護士法人とは?
弁護士法人とは、弁護士法に基づいて設立される法人で、弁護士法3条に規定する業務を組織的に行うことを目的とする法人です。
弁護士法人の社員(設立者)は、弁護士でなければなりません。よって、弁護士でない人が弁護士法人を設立することはできませんので、その意味でも信頼性の高い法人であるといえます。
弁護士法人の設立要件と手続きと流れ
弁護士法人を設立するには、以下の要件を満たす必要があります。
社員は1名以上の弁護士
弁護士法人は1人の弁護士が設立することができ、1人法人も認められています。
監査法人や税理士法人は1人法人を設立することができないため、それらに比べると設立しやすいと言えるでしょう。
弁護士法人の社員は弁護士でなければなりませんので、経営に関わる社員は、すべて弁護士でなければなりません。
定款の作成・公証人の認証
弁護士法人の定款には、少なくとも次に掲げる事項を記載しなければなりません。
- 目的
- 名称
- 法律事務所の所在地
- 所属弁護士会
- 社員の氏名、住所及び所属弁護士会
- 社員の出資に関する事項
- 業務の執行に関する事項
弁護士法人を設立するにあたり、定款について公証人の認証を受けなければなりません。
法人実印の準備
法律上、法人実印の登録は義務ではなくなりましたが、印鑑登録をしないとかなり不便です。そのため、法人実印は必須です。
設立登記の申請
弁護士法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立します。
登記が完了することによって、法人としての活動を行うことが可能となります。
成立の届出
弁護士法人は、成立したときは、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を所属弁護士会及び日本弁護士連合会に届け出なければなりません。
登記事項証明書は、法人の設立登記が完了した後、法務局にて所定の手数料を納付することで発行可能です。
設立登記の手続き
弁護士法人の設立には、法務局での登記手続きが必須です。以下は登記に必要な主な書類と流れです。
登記の概要
弁護士法人は「法人」として法務局で設立登記を行う必要があります。
登記申請日が、法人としての正式な成立日となります。設立希望日がある場合、その日には登記の申請ができるようにしておく必要があります。
登記申請先
設立しようとする弁護士法人の主たる事務所の所在地を管轄する法務局が窓口です。例えば福岡市内において弁護士法人を設立しようとするときは、福岡法務局本局が管轄の法務局となります。
必要書類の一例
- 登記申請書
- 定款
- 弁護士であることを証する書面(日税連会長が発行する社員資格証明書)
- 代表者の資格を証する書面
- 委任状(司法書士への登記申請代理の委任状)
このほかにも、社員個人の市町村長発行の印鑑証明書や、印鑑届書、印鑑カード交付申請書なども必要となります。
設立費用について
設立登記の登録免許税額は非課税です。
定款認証料として、約5万円+定款の謄本代(約2000円)がかかります。
その他、登記事項証明書や郵送費などの実費もかかります。
設立手続きを司法書士に依頼する場合、上記に加えて司法書士報酬もかかります。司法書士報酬は事務所によって異なりますが、定款認証から設立登記まで依頼するとおおむね10万円程であることが多いです。
弁護士法人のメリットと注意点
【メリット】
弁護士法人として法人化することにより、信頼性が向上するなどのメリットがあります。
- 組織化による信頼性の向上
- 業務の分業・効率化
- 後継者への承継がスムーズ
個人の法律事務所ではなく、弁護士法人を信頼して選ぶ顧客も少なくはないでしょう。そのため、事務所が軌道に乗ってきた際には法人化するのがおすすめです。
【注意点】
一方で法人化にあたって注意点もあります。
- 無限責任である点に注意が必要です(弁護士法30条の15)。
- 登記事項に変更が生じる度に登記手続きが必要となります。
- 例えば「主たる事務所」を移転した場合や、代表権のある弁護士の住所が変わった場合なども登記申請が必要です。
まとめ
弁護士法人の設立は、法律上の要件や書類作成、登記手続きなどやや煩雑ですが、その分、法人としての信頼性や業務拡大の可能性が広がります。
弁護士業務は非常に幅が広いため忙しい法律事務所が多いでしょう。法人化の手続きに手が回らないときは、追加の費用はかかりますが司法書士へ登記申請を依頼するのも手です。


