法人を経営していると、事業年度によっては赤字(欠損金)が出ることがあります。黒字であれば法人税を納めなければなりませんが、赤字の場合にはその損失を将来の利益と相殺して法人税を減らすことができます。
では、法人の赤字は何年まで繰り越して使えるのでしょうか?今回は、繰越期間や適用条件、注意点をわかりやすく解説します。
繰越欠損金とは?
繰越欠損金とは、税務上の赤字(欠損金といいます)が生じた際に、次期(翌年)の黒字額と相殺し、控除できる制度です。これにより、法人税等の税負担が軽くなるメリットがあります。
赤字は何年繰り越せるか
個人事業主の場合
赤字の場合、損益通算の規定を適用してもなお控除しきれない部分の金額(純損失の金額)が生じたときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越しが可能です。よって、赤字の繰り越しができるのは3年までです。
なお、令和5年4月1日以降に特定非常災害の指定を受けた災害より生じた純損失の金額については、一定のケースにおいて繰越控除期間が5年間へと延長されることがあります。
法人の場合
現在の法人税法では、法人の赤字(欠損金)は、最大10年間繰り越して控除することができます。よって、法人化すると最大10年まで赤字を繰り越して控除することが可能です。
※平成30年4月1日より前に開始した事業年度において生じた欠損金の繰越控除期間は9年とされています。
対象となる法人は、欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、その後の各事業年度についても確定申告書を提出している法人とされています。
繰越控除の仕組み
欠損金の繰越控除は、赤字を翌期以降の黒字と相殺する仕組みです。わかりやすい例として、以下に例を挙げます。
例)
- 第1期:▲500万円の赤字
- 第2期:+600万円の黒字
この場合、第1期の欠損金500万円を繰り越して、第2期の黒字600万円から差し引くことができます。結果、第2期の課税所得は100万円となり、法人税は100万円を基準に計算すればよいことになります。
繰越控除を使うための条件
欠損金の繰越控除を受けるには、いくつかの要件があります。
- 青色申告であること
欠損金の繰越控除は、青色申告法人に限られます。白色申告では使えません。 - 確定申告を期限内に行っていること
確定申告を期限内に提出していないと、繰越控除は適用できません。
欠損金の繰越期間は法人化するメリットといえるか?
前提として
上記で解説した通り、赤字を将来に繰り越せる制度は、
- 個人事業主(所得税):3年
- 法人(法人税):10年
と、異なります。
つまり、個人事業主として事業をしていると、赤字は3年間しか繰り越せないのに対し、法人にすると10年間繰り越せるという違いがあります。
法人化のメリットの一つである理由
- 繰り越せる期間が長いので赤字を無駄にしにくい
例えば、創業時に大きな設備投資をして数年赤字が続いた場合でも、黒字が出るまで10年間猶予があるため、節税効果を最大限に活かせます。 - 事業が安定するまでのリスクヘッジになる
新規事業や研究開発型ビジネスなどは、最初の数年は赤字になりがちです。法人であれば長期間赤字を繰り越せるため、将来の黒字化と相殺でき、資金繰りが楽になります。
以上のことから、欠損金の繰越期間が伸びるのは法人化するメリットの一つといえるでしょう。ただし、以下の点には注意が必要です。
黒字が出なければ意味がない
繰り越しは「将来の黒字と相殺する」制度なので、黒字化できなければ活用できません。
法人化すると個人事業主にはないコストがかかる
法人化するとその設立費用や法人住民税などが発生します。登記事項に変更が生じた際にはその登記も必要になるため、単純に「赤字を長く繰り越せるから得」とは限りません。
まとめ
法人の赤字(欠損金)は、現在の制度では 最大10年間繰り越して黒字と相殺できます。そのため、赤字が続いても法人化していれば個人事業主よりも長い期間税負担を軽くすることができるというメリットとなります。
ただし、以下のような注意点もあります。
- 平成30年4月1日より前に開始した事業年度は9年まで
- 青色申告・期限内申告が必須
- 法人化するとコストがかかる
赤字を無駄にしないためにも、繰越控除の仕組みを正しく理解しておくことをお勧めします。この制度について不明な点がある場合は税理士に相談するとよいでしょう。
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