会社を運営していると、取締役の業務執行や行動に問題がある場合や、持病の悪化により取締役の業務を執行することが困難になった場合、やむを得ず「解任」を検討することもあります。しかし、取締役の解任は、トラブルの原因となることが多く、慎重な対応が求められます。
今回は、取締役の解任方法と、解任における注意点について解説します。
取締役の解任とは?
「解任」とは、任期中の取締役をその職から退かせることをいいます。
取締役が故意に会社へ損害を与えた場合や、会社を欺くような行為を行った場合などにおいては、その取締役がいると会社が困ります。そのような場合に取締役を一方的に解任することができます。
これは、取締役と株式会社との関係は「委任」とされており、法律上は株式会社から一方的に取締役を解任することができるとされているためです。
取締役の解任手続き
取締役を解任するには、以下の手順を踏みます。
株主総会の開催
取締役を解任するには、株主総会の普通決議が必要です。
なお、監査等委員会設置会社において、監査等委員である取締役を解任するには特別決議によらなければなりません。
手続きの流れ
- 株主総会を招集(取締役または代表取締役が招集権限を持つ)
- 招集通知を発出(株主総会の日時等を定める)
- 株主総会の開催と議決
- 解任決議の成立(出席株主の議決権の過半数の賛成が必要)
- 役員変更登記の申請(2週間以内に取締役を解任した旨の登記を申請する)
解任の正当な理由は必要か?
会社法上は、「理由なく」解任することも可能です。
ただし、正当な理由なく解任された取締役は、会社に対して損害賠償を請求することができます。このため、「正当な理由」があるかどうかが非常に重要になります。
〈正当な理由の例〉
- 違背行為(会社のルールを守らない等)
- 他の役員や従業員との重大な対立
- 会社の方針と明確に異なる行動を繰り返す
- 長期の病気療養 など
これらは法律上の明確な基準がなく、当事者での協議が整わない場合は裁判所が定めることになります。
正当な理由なく解任すると?
正当な理由なく解任された取締役は、会社に対して損害賠償を請求することができます。そのため、解任された取締役から損害賠償請求を受けるリスクがあります。
解任登記の必要性
取締役を解任した場合、2週間以内に法務局で登記手続きを行う必要があります。
この登記を怠ると、100万円以下の過料に処せられる可能性があるため注意しましょう。
必要書類
- 登記申請書
- 株主総会議事録(解任決議の内容を証明するもの)
- 株主リスト
- 委任状(司法書士への委任状)
取締役解任における実務上の注意点
取締役の解任は、感情や勢いで行うと法的トラブルに発展することもあります。以下の注意点をよく確認したうえで進めましょう。
解任の手続きに瑕疵(不備)がないようにする
- 株主総会の招集手続きなどの手続きに瑕疵がないことが重要です。定款や会社法に定められた手続きを踏んでいないと、解任決議自体が無効や取り消しの対象とされる恐れがあります。
- 決議要件を満たしているか注意しましょう。特別決議が必要なのに要件を満たしていないということがないよう注意が必要です。
解任理由は明確にしておく
- 表面的には「普通決議で足りる」とはいえ、後の損害賠償リスクを避けるためには、「なぜ解任する必要があったのか」を文書で残すことが重要です。
- 株主総会議事録においても、「業務遂行上の重大な過失」や「長期療養が必要になったため」など、具体的な理由を記載するようにしましょう。
解任前の対話や改善の機会を設ける
- 解任された側から「突然・一方的である」と主張されると、会社の説明責任が問われます。
- 事前に話し合いの場を持ち、改善の機会を与えていたことを記録しておくと、のちのトラブル防止につながります。
解任決議後の混乱回避策を講じておく
- 解任された取締役が会社の実務に関わり続ける(たとえば書類保管など)場合、業務の停滞や混乱のリスクがあります。
- 代表印の返還、各種口座や権限の変更、社内周知など、実務上の引継ぎ体制も整備しておく必要があります。
反発・訴訟リスクに備える
- 特に、経営陣の対立が株主間でも起きている場合には、弁護士とも連携しながら慎重に進めましょう。
解任をめぐるトラブル防止のためには?
解任は取締役を一方的に辞めさせることです。そのため、取締役の解任をめぐっては、しばしば紛争に発展することがあります。以下のような対応が重要です。
✔ 解任理由を明文化しておく
株主総会の議事録などに、解任理由を明確に記録しておくことで、後日の損害賠償請求への防御になります。
✔ 弁護士や司法書士への事前相談
特に対立が激しい場合や、少数株主との関係が絡む場合には、専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
まとめ
取締役の解任は、株主総会の決議で可能ですが、その後のトラブルを防ぐためにも「手続きの適正性」と「正当な理由」が重要なカギとなります。
スムーズな手続きと円満な解決を目指すには、事前の準備と専門家のサポートが欠かせません。
お困りの際は、司法書士にぜひご相談ください。


