個人で医院を経営していると、一定の期間、規模や収益を超えた段階で法人化(医療法人化)を検討するケースが増えます。
では、個人医院が法人化することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
今回は、個人医療主が法人化して医療法人となるメリットについて解説します。
医療法人化による税務面でのメリット
所得税より法人税の方が低い
個人医院では、所得が増えるほど累進課税により最大45%の所得税率が課されます。たとえば所得が1,800万円以上では所得税の税率は40%となります。
一方、医療法人は法人税の比例税率となっており、約23%程度(中小法人であって所得が年800万円以下の場合は軽減あり)と、一定水準で抑えられるため、利益が大きい医院ほど税負担を軽減できます。なお、特定医療法人として承認された場合は19%の軽減税率が適用されます。
経費として認められる範囲が広がる
法人化すると、経営者(理事長)への役員報酬を経費として計上できるほか、
退職金や福利厚生費など、個人事業では認められにくい支出も経費算入が可能になります。
これにより、実質的な手取りを増やす節税効果が期待できます。
家族への給与支払いが明確化
個人事業では家族への給与を「専従者給与」として扱うため、基本的に経費にはできません。
法人化すれば、家族を正式な従業員や役員として雇用できるため、給与の支払いも透明化し、節税とともにガバナンス面の信頼性も向上します。
医療法人化による経営面でのメリット
資金調達力が高まる
医療法人は法人格を持つため、銀行や金融機関からの融資審査における信用力が向上します。
設備投資や新規分院開設など、今後の発展を見据えた資金調達がしやすくなります。
人材採用で有利になる
医療法人化により、社会保険や退職金制度などの整備が容易になり、職員にとっても「安定した職場」としての印象を与えます。
そのため、優秀な医師・看護師・事務職員の採用・定着につながります。
経営の見える化・管理体制の強化
法人化すると、会計が法人単位で明確化され、財務状況の把握や経営分析がしやすくなります。
また、定款(寄附行為)を定めることになり、ガバナンス体制が整うことで、組織的な経営判断が可能になります。
医療法人化による事業承継面でのメリット
医院の引き継ぎがスムーズに
個人医院では、院長が亡くなると事業自体が消滅してしまうのが原則です(※引き継ぐ方法もありますが、本記事での解説は省略します)。
一方で医療法人であれば、院長が亡くなったとしても交代により法人を存続させることができ、事業の継続性・患者の信頼関係を維持できます。
社会的信用とブランディングの向上
医療法人という形態は、患者や地域社会、取引先に対して「組織としての安定性・継続性」を示します。
また、法人名義での契約・提携も可能になり、法人名義で不動産や財産を所有でき、また地域医療ネットワークや医療連携の中でも信頼性が高まります。
これは、将来的に介護事業や訪問診療などへ事業拡大を考える際にも大きな強みとなります。
医療法人化に伴う注意点
法人化にはメリットだけではなく以下のようなデメリットもありますので、「なんとなく法人化したい」というのではなく、慎重に検討する必要があります。
設立・維持コスト(登記費用・手続き費用など)が発生
⇒専門家(税理士、社労士、司法書士、行政書士等)に支払う報酬がかかります。
利益を自由に個人に移せない(役員報酬や配当の形を取る必要)
⇒医療法人は、剰余金の配当をしてはならないため(医療法54条)、会社のような自由な利益処分ができません。
以上のことから、「節税だけが目的」や「医療法人の響きがいい」というような理由で法人化するのはおすすめできません。
将来の事業承継・人材採用・経営基盤の強化まで見据えた総合的な判断が重要です。
まとめ
個人医院が一定規模に達したら、医療法人化は経営安定と事業継続のための重要な選択肢となります。
手続にも時間がかかるため、法人化を予定している場合、専門家(税理士や司法書士など)と相談しながら検討するとよいでしょう。
法人化の検討チェックリスト
✅年間利益が1,800万円以上
✅家族や後継者への事業承継を視野に入れている
✅職員の雇用や福利厚生を充実させたい
✅経営を安定化させ、税負担を軽減したい
✅事業の拡大を検討している
上記に複数当てはまる場合は、医療法人化を具体的に検討する価値があるでしょう。
