福岡の司法書士Tです。
医療法人は株式会社のように分割することができます。医療法人の分割には吸収分割と新設分割があり、今回はそれぞれについて解説していきます。
医療法人の分割とは?
医療法人の分割は、組織再編の一つとして活用され、医療法人が営む事業の全部または一部を他の法人に承継させる手続きです。分割には以下の2種類があります。事業の効率化や経営の再構築を目的として行われることが多く、適切な手続きを踏むことが重要です。
- 吸収分割:既存の法人に事業を承継させる方式
- 新設分割:新たに設立する法人に事業を承継させる方式
医療法人の分割には、所轄庁の認可を受ける必要があります。
医療法人の新設分割
一又は二以上の医療法人は、新設分割をすることができます。この場合においては、新設分割計画を作成しなければなりません。なお、二以上の医療法人が共同して新設分割をする場合には、当該二以上の医療法人は、共同して新設分割計画を作成しなければなりません。
新設分割とは、1又は2以上の医療法人がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割により新たに設立する医療法人に承継させることをいいます。
新しい法人を設立し、そこに事業を引き継がせることで、組織再編や事業の効率化を図ることができます。
新設分割の目的とメリット
新設分割のメリットを解説します。
医療法人の事業再編・分社化
医療法人が複数の診療所や病院を運営している場合、一部の施設を独立した法人にすることで、経営の効率化や責任の明確化が可能になります。
事業承継の円滑化
次世代の経営者に事業を引き継ぐ際に、特定の事業だけを新設法人に移すことで、スムーズな承継が実現できます。
診療科ごとの法人分割
異なる診療科を運営する場合、それぞれを独立した法人として分割することで、経営判断の迅速化や専門性の向上を図れます。
新設分割の流れ
ここでは新設分割の流れを簡単に解説します。
事前準備
- 分割の目的やスキームを検討し、分割後の運営方針を策定
- 行政(都道府県)との事前協議
新設分割計画の作成
新設分割をするには、新設分割計画を作成しなければなりませんので、分割計画書を作成し、以下の内容を定めます。
- 新設分割により設立する医療法人の目的、名称及び主たる事務所の所在地
- 新設分割設立医療法人の定款又は寄附行為で定める事項
- 新設分割設立医療法人が新設分割により新設分割をする医療法人から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項
- 新設分割医療法人及び新設分割設立医療法人の新設分割後二年間の事業計画又はその要旨
- 新設分割がその効力を生ずる日
社員総会(理事会)の承認
医療法人社団においては、新設分割計画について総社員の同意を得なければなりません。医療法人財団においては、寄附行為に別段の定めがない場合、理事の3分の2以上の同意を得なければなりません。
都道府県知事の認可・財産目録等の作成
新設分割は、都道府県知事の認可を受けなければなりません。そして、医療法人は、その認可があったときは、その通知の日から2週間以内に、財産目録及び貸借対照表を作成しなければなりません。
債権者保護手続き
医療法人は、上記認可の通知の日から2週間以内に、その債権者に対し、2か月を下らない期間、異議があれば一定の期間内に述べるべき旨を公告し、かつ、判明している債権者に対しては、各別にこれを催告しなければなりません。
新法人の設立・登記
都道府県知事の認可後、新法人の設立登記を行う必要があります。新設分割は、設立の登記によって効力を生じます。
新設分割の注意点
行政手続きの厳格さ
新設する医療法人は、医療法の要件を満たす必要があるため、事前の行政協議が不可欠です。必ず専門家のサポートを受けるようにしましょう。
税務・会計処理の影響
分割によって資産や負債の移転が発生するため、適切な税務・会計処理を行う必要があります。
債権者や職員への影響
承継する資産や雇用関係について、関係者の理解を得ることが重要です。
設立の手続きが改めて必要
新たに設立する以上、許認可等を改めて取得する必要があるなど、新しく設立する場合と同じ手続きが多く求められます。
医療法人の吸収分割
続いて、吸収分割について解説します。
医療法人は、吸収分割をすることができます。この場合においては、当該医療法人がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該医療法人から承継する医療法人との間で、吸収分割契約を締結しなければなりません。
吸収分割とは、医療法人がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を分割後他の医療法人に承継させることをいいます。吸収合併とは異なり、承継する側の医療法人は消滅せず法人各として生き続けます。
なお、社会医療法人、特定医療法人、持分の定めのある医療法人、医療法第42条の3第1項の規定による実施計画の認定を受けた医療法人は、吸収分割をすることができません。
吸収分割の目的とメリット
ここでは、新設分割にはないメリットについて解説していきます。
許認可の取り直しは不要
新設分割とは異なり、吸収分割医療法人も吸収分割承継医療法人も法人各として生き続けるので、新たに許認可を取り直す必要はありません。
経営難の法人の救済
経営が厳しくなった医療法人が、他の法人に事業を承継することで、医療提供の継続が可能になります。
診療所や病院の事業移転
特定の診療所や病院の運営を、他の医療法人に移すことで、事業の最適化を図ることができます。
吸収分割の流れ
事前準備
- 分割の目的やスキームを検討し、関係者と協議
- 行政(都道府県)との事前協議
吸収分割契約
吸収分割契約を作成し、以下の事項を定めます。
- 吸収分割をする医療法人(以下この目において「吸収分割医療法人」という。)及び吸収分割承継医療法人の名称及び主たる事務所の所在地
- 吸収分割承継医療法人が吸収分割により吸収分割医療法人から承継する資産、債務、雇用契約その他の権利義務に関する事項
- 吸収分割医療法人及び吸収分割承継医療法人の吸収分割後二年間の事業計画又はその要旨
- 吸収分割がその効力を生ずる日
社員総会(理事会)の承認
医療法人社団においては、吸収分割計画について総社員の同意を得なければなりません。医療法人財団においては、寄附行為に別段の定めがない場合、理事の3分の2以上の同意を得なければなりません。
都道府県知事の認可・財産目録等の作成
吸収分割は、都道府県知事(吸収分割医療法人及び吸収分割承継医療法人の主たる事務所の所在地が二以上の都道府県の区域内にの認可を受けなければなりません。そして、医療法人は、その認可があったときは、その通知の日から2週間以内に、財産目録及び貸借対照表を作成しなければなりません。
債権者保護手続き
医療法人は、上記認可の通知の日から2週間以内に、その債権者に対し、2か月を下らない期間、異議があれば一定の期間内に述べるべき旨を公告し、かつ、判明している債権者に対しては、各別にこれを催告しなければなりません。
吸収分割の実行
都道府県知事の認可後、事業を正式に承継します。吸収分割に伴う登記を申請する必要もあります。
吸収分割の注意点
行政の厳格な認可手続き
新設分割と同様、吸収分割においても、医療提供体制に大きく影響を与えるため、事前に行政との調整が必要です。
財産・負債の整理
分割元法人の資産や負債をどのように承継するか、慎重に検討する必要があります。
債権者・職員への影響
契約の引き継ぎや職員の雇用継続について、事前に関係者と調整し、円滑な引き継ぎを図ることが重要です。
診療報酬の引き継ぎ
吸収分割後の診療報酬請求や医療機関コードの扱いについて、厚生局などの関係機関と事前に協議する必要があります。
まとめ
分割は、医療法人の統合・再編や事業承継に有効な手段ですが、認可手続きや債権者保護などの法的要件を満たす必要があります。
実際に行われている分割のほとんどは吸収分割です。これは、本文でも述べた通り新設分割では許認可等を新たに取得する必要が出てきたりと、吸収分割と比べて手間がかかるためです。
医療法人においては、分割をどのように進めるかは専門家と連携しながら、スムーズな手続きを進めることが重要です。


