医療法人は、毎事業年度終了後に「資産の総額」を登記する義務があります。しかし、事務手続きの煩雑さなどにより、この登記をうっかり忘れてしまうケースも少なくありません。今回は、資産の総額の登記を怠った場合にどうなるのか、罰則はあるのか、また対処法などについて詳しく解説します。
役員変更登記とは?
医療法人の役員は理事や監事のことをいいます。そして、理事長も、理事としての地位があるため役員です。
登記について、医療法人においては、代表権を有する者の氏名、住所及び資格として、理事長を登記しなければなりません。理事長ではない理事や監事については役員の登記が不要です。
そして、医療法人において、役員の任期は2年を超えることはできないとされているため、2年に1回は理事長の変更が必要となります。この変更の登記が役員変更登記です。仮に同じ理事長が再任する場合であっても、役員変更登記の申請が必要です。
資産の総額の登記とは?
医療法人においては、毎事業年度末日現在により、当該末日から3月以内に、資産の総額の変更登記しなければならないとされています。
具体的には以下のような情報を登記する必要があります。
- 決算日時点の資産の総額
- 決算の終了から3か月以内に登記申請を行う
これは、医療法人の財務状況の透明性を確保するための重要な手続きです。
資産の総額とは何か?という点については、以下の記事をご参照ください。社会福祉法人向けの記事ですが、医療法人でもほぼ同じです。
参考記事:社会福祉法人における資産の総額の登記とは?いつまでに申請すべき?
登記懈怠とは?
登記懈怠とは?
登記懈怠とは、法律で義務付けられている登記を、正当な理由なく期間内に行わないことを指します。医療法人においても、資産の総額の登記を怠った場合には、この「登記懈怠」に該当します。
登記を怠った場合はどうなる?
役員変更登記は、変更があった日から2週間以内に申請しなければなりません。
資産の総額の変更登記は、事業年度末日現在により3か月以内に申請しなければなりません。
これを怠ると、以下のようなことになります。
過料に処せられる
登記懈怠に該当した場合、以下のような過料(行政罰)が科される可能性があります。
- 過料の額:20万円以下
- 管轄の法務局が懈怠の事実を把握し、登記がされていないことを指摘した場合に発生
過料は刑罰ではありませんが、法人にとっては金銭的・信用的に大きな影響を与えるため、注意が必要です。
実際の影響・デメリット
資産の総額の登記を怠ると、以下のような不利益が生じる可能性があります。
- 監督官庁からの指導(都道府県知事など)
- 第三者からの信用低下
- 行政処分の前段階としての注意・指導
また、金融機関や取引先が登記簿の内容を確認することがあり、登記の不備が法人運営に悪影響を及ぼす可能性もあります。
登記を忘れた場合の対処法は?
登記を忘れていたことに気づいた場合は、できるだけ早く以下の対応を取りましょう。
速やかに登記申請を行う
遅れていても、法律上義務とされているため、必ず申請しなければなりません。
過料通知が来た場合は対応する
すでに法務局から過料通知が来ている場合は、指示に従い速やかに対応しましょう。
司法書士に相談する
医療法人の登記は特殊性があるため、経験豊富な司法書士に相談することをおすすめします。状況に応じた適切なアドバイスを受けることができます。
登記忘れを防ぐためのポイント
- 自社で登記申請を行う場合は登記の申請期限を事前にカレンダー等に記載する
- 公認会計士や顧問税理士と連携し、決算完了後にすぐ対応
- 司法書士に継続的な登記管理を依頼する
実際のところ「登記期限を事前にカレンダー等に記載する」ということをしている法人はほぼないでしょう。
しかし、司法書士は役員変更登記等の申請期限を似たような形で管理しています。それに加えて業務用ソフトからも通知が出る仕組みで、依頼者となった法人の登記懈怠を防ぐように対策を行っています。
実際、自社で登記申請を行う場合、このくらいの管理をしないと登記懈怠の原因になります。
まとめ
医療法人が資産の総額の登記を忘れた場合、「登記懈怠」として過料の対象となる可能性があります。登記の義務は法律で定められており、法人の信用にも関わる重要な手続きです。忘れてしまった場合でも、早急に対処することが必要です。
定期的な確認体制を整えることで、登記忘れを防ぎ、健全な法人運営を継続していきましょう。


