個人事業主として事業を継続していると、売上や取引先の増加、節税対策の必要性、信用力の確保などを背景に「法人化」を検討するタイミングが訪れます。法人化の方法としては「株式会社」や「合同会社」などがありますが、特に小規模事業者にとって人気が高いのが合同会社(LLC)です。
本記事では、個人事業主が合同会社を設立することの具体的なメリットを解説します。
合同会社(LLC)を設立するメリット
設立費用が安い
合同会社は、株式会社に比べて設立費用が安価です。専門家への報酬を除いた実費は以下のとおりです。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 定款認証費用 | 0円(定款認証不要) | 約5万2,000円 |
| 印紙代 | 0円(定款認証不要) | 4万円 |
| 登録免許税 | 最低6万円 | 最低15万円 |
| 実費合計 | 約6万円~ | 約25万円~ |
個人事業主が法人化を検討する際にネックになる設立コストを抑えられるため、初めての法人化として合同会社は非常に適しています。
節税効果が期待できる
法人化すると、所得税ではなく法人税が適用されるため、事業所得が増えてくると税負担が軽減される場合があります。
たとえば
- 個人事業主では所得税が最大45%(住民税を含めると55%)にもなり得ます。
- 一方、法人税は中小企業の場合、税率が23.2%に収まります。
また、法人には次のような節税策も可能です。
- 給与所得控除:代表者自身に役員報酬を支払い、経費として計上できる
- 家族への給与支給:個人事業主であれば原則として経費にできないが、合同会社として法人化することで、適正額なら家族に役員報酬を支払っても損金にできることも
もっとも、合同会社の会計は個人事業主の会計より複雑になるため、税理士と連携することが推奨されます。
社会的信用が高まる
「法人格」を持つことで、取引先や金融機関からの信用が増します。特に法人登記されていることは、取引先がリスクを判断するうえでの重要な指標となります。
- BtoBビジネスにおいて、法人であることが取引の前提条件となる場合も
- 銀行口座開設や融資申請時に有利になることもある
ただし、合同会社は株式会社と比べて信用が落ちる点には注意しましょう。
有限責任でリスクを軽減できる
個人事業主は「無限責任」ですので、事業に関するすべての負債について個人の財産で責任を負います。しかし、合同会社は「有限責任」です。
つまり、
- 出資した金額を上限として責任を負う
- 万が一事業が失敗しても、個人資産までは基本的に責任を問われない
これは、リスク管理の観点から大きなメリットです。
とはいえ、融資を受ける場合、代表者個人が連帯保証人になるよう求められることもあります。この場合、会社が解散したとしても代表者個人の借金として責任を負わなければならないため注意しましょう。
運営がシンプル
合同会社は、役員の任期がなく、株式会社のような定期的(例:2年に1回)な役員変更登記も不要です。機関設計も社員のみであるため、シンプルです。
手続き面での負担が少ないのも特徴です。
- 決算公告の義務もない(株式会社は公告が必要)
- ただし、貸借対照表等の作成義務はありますので注意しましょう。
- 株主総会や取締役会の設置義務もない
法人名義で資産を持てる
合同会社を設立すると、法人名義での口座開設・契約・不動産所有が可能になります。これにより、以下のような効果があります。
- 個人と事業の財産を明確に分離できる
- 相続対策や事業承継の際にスムーズ
- 長期的な信頼性のある資産管理が可能
例えば、個人事業主の場合、「○○商店」名義で不動産を所有することはできません。しかし合同会社であれば、「合同会社○○商店」名義で不動産を所有することができます。
まとめ
| メリット | 説明 |
|---|---|
| 設立費用が安い | 初期費用を抑えて法人化が可能 |
| 節税効果がある | 所得が増えるほど税制面で有利 |
| 社会的信用が増す | 取引先との信頼性が向上 |
| 有限責任 | 原則として個人資産にまで責任が及ばない |
| 運営が簡単 | 機関設計がシンプル |
| 資産の法人名義化 | 財産の管理・承継がスムーズ |
個人事業主として一定の収益があり、今後の成長や信用力を重視したい方には、合同会社による法人化は非常に現実的で有益な選択肢です。


