「お世話になった親族に財産を渡したい」「内縁の妻に遺産を残したい」「特定の団体に寄付したい」
このように、自分の財産を法定相続人以外の人に渡したいと考える方は少なくありません。そんな時に利用できるのが「遺贈」です。
今回は、遺贈について、法律に基づいてどのような手続きが必要なのかを詳しく解説します。
法定相続人とは?
まず、前提知識として「法定相続人」とは誰かを解説します。民法では、相続人になれる人が定められています。
- 配偶者(常に相続人)
- 子(第1順位)
- 親(第2順位)
- 兄弟姉妹(第3順位)
子(第1順位)がいなければ親(第2順位)へ、子も親もいなければ、兄弟姉妹(第3順位)へと行く仕組みです。
これら以外の人――たとえば友人、内縁の配偶者、事実婚のパートナー、介護施設などは相続人ではありません。つまり、遺言などによる手続きがない限り、財産を受け取ることはできないのです。
相続人以外の人に財産を残す方法
遺言書を作成する
もっとも確実な方法は「遺言書の作成」です。遺言書で特定の人に財産を渡すよう指定すれば、相続人以外でもその財産を受け取ることが可能です。
遺言でできること
- 「○○に○○万円を遺贈する」
- 「所有している土地を△△へ渡す」
- 「〇〇という団体へ全財産を寄付する」
遺言書の種類
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 自筆証書遺言 | 自分で手書きで作成。財産目録の部分はパソコン可。法的要件を満たさないと無効になる。家庭裁判所の検認が必要。 |
| 公正証書遺言 | 公証役場で作成し、公証人と証人2人の立ち会いが必要。安全性・確実性が高い。家庭裁判所の検認は不要。 |
※法的な確実性を求める場合は、公正証書遺言の作成がおすすめです。自筆証書遺言についても、遺言書保管制度を利用することで、公正証書遺言ほどではないものの、確実性を高めることができ、家庭裁判所の検認も不要となります。
生前贈与を行う
もう一つの方法は「生前贈与」です。生きているうちに財産を相続人以外の人に贈与してしまう方法です。
ポイント
- 贈与契約書を作成しておくと安心。
- 年間110万円までの贈与は贈与税が非課税。
- それ以上の贈与には受贈者に贈与税が発生する可能性あり。
注意点
- 将来の介護費などを考慮せずに贈与すると、自分の生活が苦しくなることもあります。
- 他の相続人との関係性が悪化する可能性もあります。
遺留分に注意が必要
相続人以外に遺産を贈る場合に注意すべきなのが「遺留分」です。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に法律上保証された取り分のことです。たとえば、配偶者や子がいるのに、全財産を他人に遺贈すると、相続人から「遺留分侵害額請求」が出される可能性があります。
参考記事:遺留分とは?割合や遺留分侵害額請求について簡単に解説
対策
- 全財産ではなく一部だけを遺贈するようにバランスを取る
- 相続人の理解を得ておく
- 生前贈与の場合は贈与の時期や金額を調整する
遺贈とは?
「遺贈」とは、遺言によって、自分の財産を特定の人や団体に贈ることをいいます。民法では、遺言による贈与を「遺贈」と呼び、遺言者の死亡によって効力が発生します。
対象者
- 法定相続人(たとえば子や配偶者など)
- 相続人でない人(友人、内縁の妻、甥姪など)
- 法人(NPO法人、社会福祉法人、地方公共団体など)
相続人へ遺贈させることはもちろん、相続人以外の人や、法人にも遺贈することができます。
遺贈の手続き
- 遺言書の作成
- 自筆証書遺言、公正証書遺言など、法的に有効な形式で作成
- 受遺者の氏名や住所、財産の内容を正確に記載
- 死亡後に遺言が執行される
- 遺言執行者が遺言に基づき手続きを行う
- 登記や預金の名義変更など
- 受遺者による承認または放棄
- 受遺者は遺贈を放棄することも可能
遺贈に関する注意点
遺言執行者の指定も視野に
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。例えば、相続財産の名義変更や預貯金の解約、遺産分割手続きなどを担当します。
遺言執行者は相続人の代理人として法的権限を持つとされており、相続手続きを円滑に進める役割を担います。
参考記事:遺言執行者のやることは?遺言書で指定しておくメリットやポイント点を解説
遺留分の侵害
法定相続人(配偶者・子・親)には「遺留分」が認められており、これを侵害すると、遺留分侵害額請求を受けることがあります。
登記手続き・名義変更
不動産を遺贈したときは、相続登記と同じく登記変更が必要です。遺贈の登記も司法書士などの専門家に依頼すると安心です。
税金(相続税)
遺贈によって財産を受け取った人にも、相続税が課税されます。相続人以外の場合、税率や基礎控除額が厳しくなるため、税理士に相談するとよいでしょう。
例えば「孫」に遺贈するときも、子がいる限りは子が相続人となり、孫は相続人以外となりますので注意が必要です。
特定の団体や法人に財産を渡したいとき
動物保護団体、宗教団体、大学、NPO法人などに寄付をしたい場合も、遺言書で指定できます。
しかし、相続人が遺言書の効力を巡って争うなど、トラブルの原因となることも少なくないようです。生前のうちに意思を表示しておくことがトラブルを防ぐカギとなります。
まとめ
相続人以外の人に財産を贈りたい場合には、遺言書の作成か生前贈与という方法を取る必要があります。しかし、遺留分や税金といった注意点もあるため、専門家の助言を得ながら準備することが大切です。
自分の思い通りに大切な財産を託すためには、早めの対策が鍵です。ご希望の方は弁護士や司法書士などに相談のうえ、確実な形で手続きを進めましょう。


