株式会社として事業を営んでいる中で、「営利目的をやめて社会的な活動に専念したい」「収益よりも理念の実現を重視したい」と考えることもあるでしょう。こうした場合に、株式会社から一般社団法人へ組織変更ができるのか?という疑問が浮かぶかもしれません。
この記事では、その可否や現実的な方法、注意点について司法書士の視点からわかりやすく解説します。
株式会社から一般社団法人への組織変更は可能か?
まず結論から言えば、株式会社から一般社団法人へ組織変更することはできません。
組織変更とは、法人の種類を変更する手続きですが、これは限られた法人間でのみ認められています。
組織変更が認められているのは?
たとえば、以下のような変更は会社法で認められています。
- 株式会社 → 合名会社・合資会社・合同会社
- 合同会社 → 株式会社 など
しかし、株式会社 → 一般社団法人のように、会社法上の営利法人から、一般社団法人という非営利法人への組織変更はできません。一般社団法人 → 株式会社への組織変更も同様できません。これは、法人の根拠となる法律が異なり、制度がまったく別のものであるためです。
株式会社を一般社団法人に移行する現実的な方法
では、どうしても非営利法人に移行したい場合は、どうすればよいのでしょうか?
現実的な方法としては、新たに一般社団法人を設立し、株式会社の事業を譲渡する方法があります。
一般社団法人を新たに設立する
まず、一般社団法人を設立します。
一般社団法人を設立するには、2人以上が共同して定款を作成する必要があります。そして、定款について公証人の認証を受けなければなりません。
そして、設立の登記をすることによって、正式に一般社団法人として成立します。
株式会社の事業や資産を一般社団法人に移転する
次に、必要に応じて株式会社の事業や資産を譲渡したり、社員や関係者の役割を移したりします。
(この段階では税務や契約上の整理が必要です)
許認可について
許認可が必要な事業を譲渡する場合、改めて許認可を取り直す必要も出てきますので、計画は慎重に行う必要があります。
不動産登記について
事業譲渡にあたって不動産を譲渡する場合は、事業譲渡を原因として譲受法人への所有権移転登記を申請する必要があります。登記の申請にあたって、不動産の価額の2%ほど登録免許税が発生します。
この登記には、主に以下の書類が必要となります。必要となる書類は取引のケースによって異なるため、司法書士へ相談するとよいでしょう。
- 登記申請書
- 固定資産税評価証明書等(登録免許税額の算出の為)
- 登記原因証明情報(事業譲渡により譲渡した旨を証するもの)
- 代理権限証明情報(司法書士への委任状)
このほか、会社法人等番号を提供しなければなりません。
また、令和6年4月より、法人が不動産の登記名義人となるときは、所有者である法人の商号・名称や住所のほか、会社法人等番号も登記事項となる旨の改正がされました。
商業・法人登記について
株式会社、一般社団法人のいずれも、事業譲渡により譲渡(譲受)した旨は登記事項とされていないため、登記は不要です。
ただし、事業譲渡と同時に商号・名称を変更するなど、他の登記事項とされている点について変更を行った場合、登記の申請が必要となります。
注意すべきポイント
- 契約の名義変更:取引先との契約が株式会社名義であれば、変更や再締結が必要です。
- 税務上の影響:事業譲渡に伴い、法人税や消費税などが発生する場合があります。
- 認可や許可:業種によっては、事業の譲渡にともない行政庁の許認可や届出などが必要となることがあります。
- 出資について:一般社団法人では設立に際して、株式会社のような出資をすることはできません。
まとめ
株式会社から一般社団法人へ「組織変更」することは法律上できませんが、新たに一般社団法人を設立し、株式会社から事業等を移すことで実質的な移行は可能です。
このような手続きは、法務・税務・契約面で専門的な知識が必要となるため、司法書士や税理士などの専門家にご相談されることをおすすめします。


