2022年10月に施行された「労働者協同組合法」により、新しい働き方として注目されているのが「労働者協同組合(ワーカーズコープ)」です。今回は、この協同組合における「出資金」について、基本的な仕組みから具体的な金額、払い戻しの可否まで詳しく解説します。
労働者協同組合とは?
労働者協同組合は、働く人々が出資し、自ら運営し、労働することを基本とする組織です。事業の目的や運営方針についても、組合員が話し合って決めていく「民主的な経営」が特徴です。
労働者協同組合とはどんな法人?という内容については以前取り上げておりますので、併せてご参照ください。
労働者協同組合の出資金とは?
出資金とは、組合員が組合に対して拠出する資金のことで、労働者協同組合の設立や事業運営の資金源となります。株式会社における資本金に近い性質を持ちますが、投資による配当目的というよりも、「事業に参加するための共同の資金」としての意味合いが強いのが特徴です。
労働者協同組合において、組合員は、出資一口以上を有しなければならないため、組合員になるためには出資をする必要があります。
労働者協同組合における出資金の基本的なルール
労働者協同組合法における出資金のポイントは次のとおりです。
出資は必須
労働者協同組合の組合員になるには、必ず出資を行う必要があります。金額については、各組合の定款で定められますが、少額からの設定も可能です。ただし、出資一口の金額は、均一でなければなりません。
一人一票の原則
組合員は、各1個の議決権及び役員又は総代の選挙権を有します。これは、出資金の額にかかわらず、組合の意思決定においては「一人一票」の原則が適用されるということです。株式会社のように出資額に応じて議決権が異なる仕組みとは異なり、すべての組合員に平等な発言権と決定権があるということです。
出資配当は可能だが限定的
出資に対する配当を行うこともできますが、労働者協同組合は株式会社とは異なり、利益を組合員に配る目的で設立するわけではないため、その配当は限定的です。そして、剰余金の配当は、組合の定款で定め、組合員が組合の事業に従事した程度に応じてしなければなりません。
出資金の払戻し
組合員は、組合員は、90日前までに予告し、事業年度末において脱退することができます。このとき、定款で定めるところにより、その払込済出資額を限度として、その持分の全部又は一部の払戻しを請求することができます。この持分は、脱退した事業年度末における組合財産によって定められます。
この払戻し請求権は、脱退の時から2年間行わないときは、時効によって消滅します。
出資金の金額の例
出資金の額は組合ごとに定められます。例えば「1口1万円で3口以上」といったように設定をします。
労働者協同組合の出資金に関する注意点
- 元本保証はない:出資金は事業の損失に充てられることもあるため、元本が保証されているわけではありません。
- 譲渡制限:会社とは異なり、組合員の持分は、譲渡することができません。
- 出資比率の上限:1人の組合員の出資口数は、出資総口数の25%を超えてはなりません。これは、支配構造の偏りを防ぐためです。
労働者協同組合の出資額変更の方法と注意点
組合は、総会の決議において出資一口の金額の減少をすることができます。ここでは、その方法について解説します。
定款の変更
出資額(たとえば「1口の金額」や「最低出資口数」など)を変更するには、まず組合の定款を変更する必要があります。
債権者保護手続
出資一口の金額は、組合の債権者にとって重要なものです。そのため、組合が出資一口の金額の減少をする場合には、組合の債権者は、当該組合に対し、出資一口の金額の減少について異議を述べることができます。
組合は、1か月を下らない期間、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければなりません。
- 出資一口の金額を減少する旨
- 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨
異議を述べた債権者には、弁済等をしなければなりません。
登記の申請
出資一口の金額及びその払込みの方法は、組合の登記事項であるため、変更が生じた場合はその変更の登記を申請しなければなりません。
登記の申請には主に以下の書類が必要になります。
- 登記申請書
- 出資一口の金額変更を証する書面(総会の議事録)
- 債権者に対し公告及び催告をしたことを証する書面
- 委任状(司法書士への登記申請の委任を証するもの)
ポイント・注意点
- 出資額の引き上げは、組合員にとって経済的負担となるため、納得と合意形成が重要です。
- 引き下げる場合でも、債権者に対する保護手続きなどが必要となることから、慎重な計画が求められます。
まとめ
労働者協同組合の出資金は、組合員が主体的に事業に関与するための重要な要素です。資金を出すことで組合員としての資格を得ると同時に、運営への参加権と責任も負うことになります。出資金は「投資」ではなく、「共に働き共に運営するための資金」として捉えるのがポイントです。


