福岡の司法書士Tです。
社会福祉法人の合併とは、二つ以上の社会福祉法人が一つに統合されることを指します。これは、経営の効率化やサービスの充実を目的として行われることが多く、近年、少子高齢化や人材不足の影響もあり、注目されています。そこで、今回は社会福祉法人の合併について解説していきます。併せて、近い種類である医療法人との合併ができるかについても解説します。
社会福祉法人の合併について
社会福祉法人の合併は、法人の組織再編の一つとして活用されます。社会福祉法人において、合併には以下の2種類があります。
- 吸収合併:既存の法人に事業を承継させる方式
- 新設合併:新たに設立する法人に事業を承継させる方式
社会福祉法人が合併するには、合併契約書の作成や所轄庁の認可などの手続きが必要です。
本記事では、吸収合併について詳しくみていきます。
社会福祉法人の吸収合併
社会福祉法人は、吸収合併をすることができます。吸収合併とは、社会福祉法人が他の社会福祉法人とする合併であって、合併により消滅する社会福祉法人の権利義務の全部を合併後存続する社会福祉法人に承継させるものをいいます。
社会福祉法人が吸収合併をするときは、当該他の社会福祉法人と吸収合併契約を締結しなければなりません。
吸収合併契約の締結
合併をする社会福祉法人は、合併契約を締結しなければなりません。
吸収合併契約においては、以下の事項を定める必要があります。
- 吸収合併後存続する社会福祉法人及び吸収合併により消滅する社会福祉法人の名称及び住所
- 吸収合併の効力発生日
- 吸収合併消滅社会福祉法人の職員の処遇
評議員会の決議
吸収合併消滅社会福祉法人は、評議員会の決議によつて、吸収合併契約の承認を受けなければなりません。
吸収合併存続社会福祉法人においても、評議員会の決議によつて、吸収合併契約の承認を受けなければならない。
この評議員会の決議は、吸収合併消滅社会福祉法人と吸収合併存続社会福祉法人のいずれにおいても議決に加わることのできる評議員の3分の2以上による多数の決議が必要です。
所轄庁の認可
吸収合併は、所轄庁の認可を受けなければ、その効力を生じません。
社会福祉法人の所轄庁は、原則としてその主たる事務所の所在地の都道府県知事です。
ただし、主たる事務所が市の区域内にある社会福祉法人であってその行う事業が当該市の区域を越えないものは市長(特別区の区長)
主たる事務所が指定都市の区域内にある社会福祉法人であってその行う事業が一の都道府県の区域内において二以上の市町村の区域にわたるもの及び地区社会福祉協議会である社会福祉法人は指定都市の長
社会福祉法人でその行う事業が二以上の地方厚生局の管轄区域にわたるものであって、厚生労働省令で定めるものにあっては、厚生労働大臣とされます。
債権者保護手続
吸収合併をするときは、社会福祉法人の債権者を保護するための手続きをとらなければなりません。この債権者とは、金融機関や社会福祉法人の取引先などが該当します。
吸収合併消滅社会福祉法人
吸収合併消滅社会福祉法人は、所轄庁の認可があったときは、2か月を下らない期間、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、判明している債権者には、各別にこれを催告しなければなりません。
- 吸収合併をする旨
- 吸収合併存続社会福祉法人の名称及び住所
- 吸収合併消滅社会福祉法人及び吸収合併存続社会福祉法人の計算書類に関する事項
- 債権者が2か月を下らない期間内に異議を述べることができる旨
異議を述べなかった債権者は、合併契約について承認したものとみなされます。
吸収合併存続社会福祉法人
吸収合併存続社会福祉法人は、所轄庁の認可があったときは、2か月を下らない期間、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、判明している債権者には、各別にこれを催告しなければなりません。
- 吸収合併をする旨
- 吸収合併存続社会福祉法人の名称及び住所
- 吸収合併消滅社会福祉法人及び吸収合併存続社会福祉法人の計算書類に関する事項
- 債権者が2か月を下らない期間内に異議を述べることができる旨
異議を述べなかった債権者は、合併契約について承認したものとみなされます。
上記のように、吸収合併においては、吸収合併消滅社会福祉法人と吸収合併存続社会福祉法人のいずれにおいても債権者保護手続が必要です。
登記
吸収合併消滅社会福祉法人においては解散の登記を申請し、吸収合併存続社会福祉法人においては吸収合併による変更の登記を申請します。
社会福祉法人が吸収合併するメリット
社会福祉法人が吸収合併を行うメリットは次のとおりです。
経営の安定化
小規模法人では資金や人材の確保が課題となることが多いですが、合併により経営基盤が強化され、財務の安定が期待できます。
サービスの充実
合併により、異なる施設や事業が統合されることで、多様な福祉サービスの提供が可能となり、地域住民にとって利便性が向上します。
人材の有効活用
職員の配置転換や専門分野の融合により、業務の効率化が進み、より質の高い福祉サービスの提供が可能になります。
合併の注意点
社会福祉法人の合併における注意点においても触れておきます。
職員・利用者への影響
合併により、職員の勤務条件が変更されたり、利用者へのサービス内容が変わる可能性があります。円滑な合併を進めるために、事前の説明や調整が重要です。
負債の引き継ぎ
合併後は、合併前の法人の資産だけではなく負債(借入金等)も引き継がれるため、財務状況を十分に確認する必要があります。
地域社会との連携
社会福祉法人は地域とのつながりが強いため、合併により地域住民への影響が出ることもあります。事前に関係者との協議を行い、理解を得ることが重要です。
社会福祉法人と医療法人は合併できる?
まず結論からいうと、社会福祉法人と医療法人は合併できません。
社会福祉法人は、他の社会福祉法人と合併することができますが、社会福祉法人以外の法人と合併することはできません。
よって医療法人と合併することはできません。
また、提供しているサービスや制度も社会福祉法人と医療法人とでは異なりますので、仮に合併を認めてしまうとどのようなサービスを行う社会福祉法人なのかが分かりづらくなってしまいます。
可能な方法
合併はできませんが、法人間の連携という形で協力することは可能です。
・社会福祉法人が医療法人から病院の運営を受託する
・医療法人が社会福祉法人の介護施設を支援する
・新しい法人を設立し、両者が共同運営する
といった方法が考えられます。
特に、新しい法人を設立して共同運営するのならば、「医療法人」や「社会福祉法人」との枠にとらわれずに様々な法人を検討できます。
株式会社や合同会社のほか、一般社団法人やNPO法人なども活動内容によっては検討可能です。まずは司法書士等の専門家に相談してみるとよいでしょう。
これらの方法を活用すれば、合併はせずとも両法人の強みを生かしながら連携を図ることができます。
まとめ
社会福祉法人の合併は、経営基盤の強化やサービスの充実を図るための有効な手段ですが、手続きが複雑で、関係者への十分な配慮が必要です。合併を検討する際は、専門家のアドバイスを受けながら、慎重に進めることをおすすめします。
また、社会福祉法人と医療法人の合併はできませんが、両法人が互いに支援する、共同運営する法人を新たに設立するなど、合併しなくても連携することは可能です。


