商業登記は会社の基本情報を示す重要な公的記録です。しかし近年、登記制度の盲点を突いて「虚偽の登記」がされる被害も報告されています。
たとえば、「代表取締役を勝手に変更された」「知らない人が取締役として登記されていた」など、信じがたい事例も実際に起きています。
最近も、虚偽の役員変更登記がされ、その後会社の代表者に成りすまして取引を行った疑いのある事例が報告されました。
今回は、商業登記・法人登記において虚偽の登記を防ぐための実践的な対策をわかりやすく解説します。
虚偽の登記がされると?
虚偽の登記とは、実際には行われていない事項を登記簿に記載することをいいます。
- 実際には選任されていない者が取締役や理事として登記される
- 代表取締役の解任がなされていないのに変更登記される
- 株主総会が開かれていないのに議決があったように議事録を作成される
などの行為が典型です。
虚偽の登記がされる原因とは?
- 法務局は、登記申請に必要な書類の真偽についての審査はしない
- 登記の申請については、申請書類がそろっているかの審査しかされません。そのため株主総会や取締役会の議事録が偽造されても、形式上真正に作成されていれば登記が受理されてしまいます。
- 不動産登記の申請においても同じです。
- 登記義務がある会社側が登記情報を放置しているため、不審な登記に気づかない
つまり、第三者が代表者に成りすまして登記の申請を行っていないか?といった審査はされないということです。
虚偽登記のリスク
必要書類を偽造され、代表者に成りすまして登記を申請する事例が報告されています。
- 実質的に会社の支配権を奪われる
- 銀行口座の名義変更、印鑑証明の取得がされ、資産を引き出される
- 不正な契約を結ばれ、法的なトラブルに巻き込まれる
- 取引先や金融機関からの信用を失う
虚偽の役員変更登記がされ、勝手に代表取締役が書き換えられて会社を乗っ取られるケースが多くみられます。
虚偽登記を防ぐ具体的な対策
登記簿の定期的な確認
会社や法人の登記事項証明書を定期的(月1回)に取得し、自社の登記内容を確認しましょう。不審な変更があった場合、すぐに気づくことができます。
現商業登記・法人登記の制度下では、この定期的な確認が最も有効な手段の一つといえます。なぜなら商業登記や法人登記は不動産登記とは異なり、「登記完了証」といったものは発行されないため、ウソの登記がされてしまっても気付くことが難しいのです。
自社で登記簿の定期的な確認作業が難しい場合、司法書士と定期的な確認を行う旨の契約を行うことで対応してもらえるでしょう。
登記の確認だけなら無料?
登記の確認は無料ではありません。登記情報の取得を行うには数百円程度の費用がかかります。また、定期的な登記チェックを司法書士に依頼する場合は司法書士費用もかかります。司法書士報酬と合わせても数千円/月ほどと高額なものではありませんが、虚偽の登記がされるリスクを考えると数千円でリスクヘッジできるのは大きいです。
印鑑や書類の厳格な管理
会社・法人代表印や印鑑証明書、株主総会議事録など、登記に必要な書類を厳重に管理します。代表者の印鑑カードや印鑑証明、会社・法人実印は絶対に他人に渡さないことが重要です。
「信頼できる人なんて一人もいない」と考えてこれらを絶対に他人に預けないようにしてください。
登記識別情報の保管と通知設定
不動産登記が完了した後に発行される「登記識別情報」は印鑑証明と同様に、不動産の権利を守るために極めて重要な情報です。これを知られないよう保管し、漏洩がないようにします。
定款(寄附行為)の見直しと防衛的な条項の追加
たとえば、取締役の選任や解任についての要件を厳格に定款で定める(特別決議や特定株主の同意条項など)といったことも、虚偽登記の抑止になります。
万が一虚偽登記がされてしまった場合は?
商業登記・法人登記制度には脆弱性もあり、上記の対策をとったとしても虚偽登記がされることを完全に防ぐことは難しいです。
また、不動産登記でも同様で、特に「登記済証(いわゆる権利証)」が偽造されるケースが多くみられます。
虚偽登記が見つかった場合は、直ちに司法書士に相談してください。
まとめ
虚偽登記は、どの会社でも被害者になる可能性があります。とくに中小企業では、登記管理を甘く見ていることで、第三者による「合法に見せかけた不正」に会社や法人を奪われるリスクがあります。
ウソの登記がされないための有効な対策として、以下の3点を習慣にしておきましょう。
- 登記簿を定期的にチェック
- 重要書類(議事録・会社実印等)の厳格な保管
- 定款や登記事項の定期見直し
当所でも定期的な会社登記・法人登記のチェックを承っております。


