社会保険労務士(社労士)事務所において、事業規模の拡大により法人化を検討することもあるでしょう。社会保険労務士事務所が社会保険労務士法人(社労士法人)になることで得られるメリットもいくつかあります。今回は、社会保険労務士法人として法人化する手続きとメリットについて解説します。
社会保険労務士法人とは?
社会保険労務士法人とは、社会保険労務士法に基づいて設立される法人で、複数の社会保険労務士が共同で業務を行うために設立されます。個人の社労士と異なり、法人としての信用力や規模のメリットを活かし、企業向けの労務管理や社会保険手続きをサポートすることができます。
社会保険労務士法人は、社会保険労務士の集まりによる法人であるため、社会保険労務士でなければ設立者となることはできません。例えば、税理士が設立者となって社会保険労務士法人を設立することはできません。
社会保険労務士法人の設立の流れ
社労士法人を設立するためには、以下の要件を満たす必要があります。
事務所を設置する
法人の主たる事務所を決めます。主たる事務所の所在地は、定款の絶対的記載事項(必ず記載しなければならない事項)にもなっています。
定款の作成・公証人の認証
社会保険労務士法人を設立するには、その社員になろうとする社会保険労務士が、定款を定めなければなりません。そして、定款には、少なくとも以下の事項を記載しなければなりません。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 社員の氏名及び住所
五 社員の出資に関する事項
六 業務の執行に関する事項
なお、社会保険労務士法人の定款変更は、総社員の同意によってすることができます。
社員とは、社会保険労務士法人の設立者を示します。一般用語として従業員を示す「社員」とは異なりますので、社会保険労務士でなければ法人の従業員になれないわけではありません。
そして、定款は公証人の認証を受けなければなりません。
設立登記の申請
社会保険労務士法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立します。そのため設立登記は、法人として正式に認められるための重要な手続きです。
設立登記は設立者である社会保険労務士が行うほか、司法書士へ依頼する方法もあります。登記申請を司法書士へ依頼することで、登記のためにかける事務の手間を省くことができるメリットがあります。
社会保険労務士法人の設立は、組合等登記令に基づいて行います。組合等登記令によれば、以下の事項が社会保険労務士法人の登記事項とされています。
① 目的及び業務
② 名称
③ 事務所の所在場所
④ 代表権を有する者の氏名、住所及び資格
⑤ 存続期間又は解散の事由を定めたときは、その期間又は事由
⑥ 社員(社会保険労務士法人を代表すべき社員を除く。)の氏名及び住所
⑦ 社員が社会保険労務士法第25条の15第2項に規定する特定社員であるときは、その旨
⑧ 代表権の範囲又は制限に関する定めがあるときは、その定め
⑨ 合併の公告の方法についての定めがあるときは、その定め
⑩ 電子公告を合併の公告の方法とする旨の定めがあるときは、電子公告関係事項
社会保険労務士法人設立の登記の申請書には、定款及び代表すべき者の資格を証する書面を添付しなければなりません。また、上記の⑥~⑩に掲げる事項を登記するための書面として、設立の登記の申請書には、その事項を証する書面を添付しなければなりません。
成立の届出
社会保険労務士法人は、成立したときは、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書及び定款の写しを添えて、その旨を、その主たる事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている社会保険労務士会を経由して、全国社会保険労務士会連合会に届け出なければなりません。
社労士法人設立のメリット
社労士法人には、以下のようなメリットがあります。
- 信用力の向上
- 法人名義で契約できるため、企業からの信頼を得やすくなります。士業事務所では個人事務所よりも法人の方が信用を得やすいです。
- 継続性の確保
- 個人の退職や死亡に左右されず、法人としての存続が可能です。
- 資金調達の容易さ
- 法人としての信用が高まり、事業にあたって金融機関からの融資を受けやすくなります。
- 節税効果
- 法人化により、所得税よりも法人税の方が有利な場合があり、経費計上の幅も広がります。
- 責任の明確化
- 法人として契約を結ぶことで、社会保険労務士個人の責任を法人に分離でき、個人のリスクを軽減できます。
特に、信用を得やすい点はメリットが大きいでしょう。依頼にあたって、個人の事務所よりも社会保険労務士法人の方が安心できると考える顧客も少なくないでしょう。
まとめ
社会保険労務士法人の設立には、複数の手続きが必要ですが、法人化することで信用力や業務の拡大が期待できます。設立を検討する際には、司法書士や税理士など他士業と連携しながら進めるとスムーズです。


