福岡の司法書士Tです。
日本では、少子高齢化の影響により中小企業の後継者不足が深刻化しています。この課題を解決する方法の一つとしてM&A(Mergers and Acquisitions)を活用した事業承継が注目されています。M&A承継とは、企業の合併や買収を利用した事業承継をいいます。親族承継や従業員承継と比べ、M&Aによる事業承継にはさまざまなメリットがあります。本記事では、その利点を詳しく解説します。
M&A事業承継とは?
M&Aを活用した事業承継とは、後継者不足や経営戦略の一環として、第三者に会社や事業を譲渡する方法のことを指します。M&Aを活用した事業承継には、いくつかの主要な方法があります。
M&A事業承継の方法
① 株式譲渡
会社の株式を譲渡することで、経営権を買い手に引き継ぐ方法です。会社の株式を渡すためその会社の法人各が生き続けるのもポイントです。
✅ 会社の法人格や契約関係をそのまま維持できる
✅ 取引先や従業員への影響が少ない
✅ 売り手にとっては、売却益を得やすい
② 事業譲渡
会社の一部または全部の事業資産(顧客・設備・ノウハウなど)を譲渡する方法です。組織再編を行うよりもコストはかかりにくいでしょう。承継を行いたい事業のみを承継することもできます。
✅ 不要な負債を切り離して譲渡できる
✅ 買い手にとって、必要な事業部分だけを取得可能
③ 合併・分割
会社同士を統合する「合併」や、事業を切り出して他社に移す「会社分割」を行う方法です。組織再編を行うための手間やコストがかかる点があります。合併を行うとその会社の法人各は消滅し、引継ぎを受けた会社が取り込みます(人でいうと「相続」に近いです)。分割を行う場合、承継を行いたい事業のみを承継することもできます。
✅ シナジー効果(相乗効果)が期待できる
✅ 企業規模の拡大やブランド強化が可能
M&Aを活用した事業承継のメリット
M&A事業承継を行うメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれみていきます。
後継者不在でも事業を存続できる
事業承継において最大の課題は「後継者の不在」です。日本の中小企業の多くは、経営者の高齢化に伴い後継者探しに苦慮しています。そして後継者がいなければ、会社を廃業するほかないということになってしまいます。M&Aを活用すれば、親族や社内に後継者がいなくても、信頼できる第三者に事業を譲渡することで会社を存続させることが可能です。
従業員の雇用を守れる
廃業という選択をすると、会社の従業員が職を失う可能性があります。しかし、M&Aで事業を引き継げば、新しいオーナーのもとで事業が継続され、従業員の雇用も守られます。特に、買収企業が同業種であれば、スムーズな引継ぎが期待できます。新しいオーナーにとっても、スキルを持った従業員をそのまま雇用できるという点でメリットが大きいでしょう。
近年はどの業界でも人手不足が目立ちます。会社を大きくしようと思っても、人が集まらずうまくいかないことも多いです。そこで、M&A事業承継で引継ぎをを受けることによって、求人活動にかける費用を削減することができるという面もあります。
企業の成長・発展が見込める
M&Aによる事業承継は、単なる引継ぎだけでなく、企業の成長機会にもなります。買収企業、被合併会社や分割会社が持つ技術力やノウハウを活用することで、承継会社の事業の拡大や新たな市場開拓が可能になります。
経営者が適正な利益を得られる
M&Aを通じて企業を譲渡することで、現経営者はその対価として売却益を得ることができます。これにより、引退後の生活資金や新たな投資資金を確保することが可能です。
事業承継のスピードが速い
親族承継や社内承継の場合、後継者の育成や承継準備に長期間を要することが一般的です。しかし、M&Aによる事業承継は、適切な買い手が見つかれば比較的短期間で完了できるため、スムーズな引継ぎが実現します。
企業ブランドや取引先との関係を維持できる
廃業すると、長年築き上げたブランドや顧客・取引先との関係が失われます。しかし、M&Aで承継すれば、これらの資産を活かしながら、会社を存続させることが可能です。特に高いブランドをもつ企業のブランド力は代えられないものがあります。これを引継ぎできるのはM&A承継の大きなメリットと言えるでしょう。
M&Aによる事業承継の成功のポイント
M&Aによる事業承継は第三者に事業を承継する者ですから、適切に行わないと会社を乗っ取られたりする危険性ももっています。ここでは、そのようにならないよう事業承継を成功させるポイントを解説しています。
適切な買い手を選定する
M&A成功のカギは、事業を引き継いでくれる適切な買い手を見つけることです。業界の理解がある企業やシナジー効果を生み出せる企業が理想的です。
特に、信頼できる第三者を探すことは重要です。さまざまな交流会に参加するなどをし、信頼できる第三者とマッチングできるようにする必要があります。yentaなど、経営者向けマッチングサイトを利用するのも手です。
早めの準備をする
M&Aをスムーズに進めるためには、財務状況の整理や経営の見える化が重要です。早い段階から専門家と相談し、準備を進めることが成功のポイントとなります。
また、後継者を探すのも一苦労で、状況次第では年単位でかかることも考えられます。どのような後継者に事業を渡すかというのも計画しておくとよいでしょう。
専門家を活用する
M&Aは複雑なプロセスを伴うため、M&A仲介会社や金融機関、弁護士や会計士、司法書士といった企業法務の専門家のサポートを受けることが重要です。専門家のサポートを受ける場合、まずは企業に関しての強みをもった弁護士や会計士、司法書士を探してみるとよいでしょう。どの士業もそれぞれ得意分野がありますので、明確に企業に強いとうたっている士業のサポートを受けるのがポイントです。
まとめ
いかがだったでしょうか。M&Aを活用した事業承継には、後継者不在の問題を解決し、従業員の雇用を守りつつ、企業の成長も期待できるという大きなメリットがあります。特に、近年は中小企業向けのM&A市場が拡大しており、近年では事業承継の手段として現実的な選択肢となっています。
事業承継を検討している経営者の方は、早めに準備を始め、M&Aという選択肢を視野に入れてみてはいかがでしょうか?


