いじめは、心身に深刻な影響を及ぼす重大な問題です。いじめを原因として自ら命を絶つ児童や生徒も少なくないため、社会問題になっています。そして、いじめは学校や職場など、さまざまな場面で起こり得ます。被害を受けたとき、泣き寝入りせず、法的な視点を持って冷静に対応することが大切です。
今回は、いじめを受けた際に取るべき具体的な対策について解説します。
「いじめ」とは?
いじめとは、ある人に対して、継続的に精神的・身体的な苦痛を与える行為を指します。
学校や職場、家庭など、どこでも起こりうる問題です。
法律上も定義が存在します。たとえば、学校におけるいじめは「いじめ防止対策推進法」において以下のように定められています。
「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
重要なのは、「相手がいじめだと感じているかどうか」ではなく、「被害を受けた本人が苦痛を感じているかどうか」が基準であるという点です。
また、職場における「いじめ」は、パワーハラスメント(パワハラ)などのハラスメントとして捉えられ、厚生労働省によるガイドラインや労働法上の安全配慮義務に基づく対応が求められます。
なぜいじめが発生するのか?
多くの方は、人に対する「いじめ」なんて行いません。「いじめ」はしてはいけないことだとわかっているからです。しかし、一部の心無い人間は、「外見の問題」「能力が低い」などを理由にいじめを行います。心無い人間がいなくならない限り、いじめはなくなりません。
なお、「男女関係」を原因とするいじめも発生しています。これタイプでは、男女の恋愛関係における「敗者」が、「勝者」に対していやがらせを行うパターンが多いです。
「いじめ」対策
いじめを受けたときの対策は以下のとおりです。
証拠を集める
いじめの事実を証明するために、できるだけ多くの証拠を残しましょう。
- 加害者の言動を記録:日付や場所、内容を日記やメモに残す
- メールやSNSのやりとりを保存:スクリーンショットや印刷も有効
- 音声・映像の録音録画:可能であれば、スマートフォン等で記録
特に、データや音声は強い証拠になります。録音についても、現在はスマートフォンのアプリで簡単にできます。
証拠は、学校や職場に相談する際、または法的手段をとる際に大きな力となります。
信頼できる人に相談する
1人で抱え込まず、早い段階で周囲に相談しましょう。
- 家族に隠さず相談する
- 学校内であれば担任や養護教諭、スクールカウンセラー
- 職場の場合は上司や人事部、産業医
- 相談窓口として、法務省の「いじめ相談ダイヤル」や地方自治体の窓口も利用可
特に、いじめを受けている学生の方は、家族に秘密にしているケースが多いです。しかし、いじめを受けているということは決して恥ずかしいことではありません。一人で抱え込まず、誰かに相談しましょう。
また、相談した事実も、後に「対応を求めた証拠」として重要です。
学校・職場に対する対応を求める
学校や職場には、いじめ防止や安全配慮義務があります。無視された場合は、その対応が不十分だったとして、組織の責任を問うことも可能です。
- 学校には「いじめ防止対策推進法」に基づく対応義務があります
- 職場では「パワハラ防止法」や労働契約法による安全配慮義務が課されます
文書での申し入れや、対応状況を記録に残すことも有効です。
特に職場でのハラスメントでは、会社に相談したという事実は重要な証拠になります。
法的手段の検討
いじめがひどく、状況が深刻な場合、法的措置を検討することも重要です。
- 損害賠償請求(慰謝料など)
- 名誉毀損・侮辱・暴行・脅迫などの刑事告訴
民事・刑事いずれにおいても、弁護士に相談することで、適切な対応が可能になります。
心のケアを大切に
法律的対応も重要ですが、被害者の心のケアは何より大切です。必要に応じて、精神科医やカウンセラーの力を借りてください。治療や通院にかかった費用は、損害賠償の対象になることもあります。
いじめられる側にも責任はあるのか?
まず結論からいいますが、いじめられる側に責任はありません。
中にはいじめられる側にも責任があると主張する方がいますが、その主張は「責任」ではなく「原因」であることが大半です。
では、いじめられる側にも「原因」はあるのか?というと、いじめられる側に原因があるケースもあります。しかし、あくまでいじめにつながった「原因」に過ぎないのであって、「責任」ではありません。いじめの加害者は、この「原因」と「責任」を履き違えています。
いじめは、「相手が悪いからされても仕方ない」という理屈で正当化されるものではありません。どんな性格であっても、どんな行動をとったとしても、いじめという行為そのものが不当で違法なものです。
法律の観点
法律は、被害者に「非があるかどうか」ではなく、いじめの加害行為があったかどうかを問題にします。たとえば、人格否定・無視・暴力・ネット上の誹謗中傷などは、それ自体が名誉毀損・侮辱罪・暴行罪・傷害罪などに該当する可能性があります。
加害者が「からかっただけ」「あいつにも問題がある」と主張しても、それがいじめ行為を正当化する理由にはなりません。
「自分にも悪いところがあったかもしれない」と思っている方へ
多くのいじめ被害者は、自分を責めてしまいがちです。しかし、それは加害者側が責任を転嫁するためによく使う論法でもあります。
たとえ相手に対して不満があったとしても、暴言や無視、暴力などで対応することは許されないというのが、社会のルールであり、法律の考え方です。
今、「いじめ」を受けている方へ
あなたは、決してひとりではありません。
いじめは「我慢すればそのうちおさまるもの」ではありません。放っておくと、心身に深刻なダメージを残し、将来にも影響を与える可能性があります。ましてや、自ら命を絶つなんてことがあってはなりません。そうならないためにも、今この瞬間から動き出すことが大切です。
- 証拠を残しましょう(メモ・録音・SNSの記録など)
- 信頼できる人に相談しましょう(家族など)
- 安全な場所へ避難することも選択肢です
- 公的機関の相談窓口や弁護士などの法律家に相談しましょう
「こんなことを相談してもいいのか」と迷う必要はありません。あなたの痛みは、社会が、そして法律が向き合うべき問題です。声を上げることは、弱さではなく、勇気です。
まとめ
いじめは、決して見過ごしてはいけない重大な権利侵害です。我慢すべきことではありません。自分自身を守るためにも、以下のポイントをひとつずつ丁寧に実践してみてください。
いじめとは何かを正しく知る
- いじめは、被害者が「苦痛を感じているかどうか」が基準
- 学校・職場・家庭など、あらゆる場面で発生しうる問題
今まさに苦しんでいる人へ
- 一人で抱え込まないでください。
- あなたを守る制度や法律があります。
- 信頼できる人、専門家、そして法的支援を頼ってください。
証拠を集める
- 日記や録音、SNSのスクリーンショットなどを保存
- 「いじめの証拠」は後の交渉や法的対応に役立ちます
証拠はものすごく大事です。可能な限りたくさんの証拠を集めてください。
周囲に相談する
- 学校では教師やスクールカウンセラーに
- 職場では上司や人事、外部の相談機関に
- 第三者に相談することで、事態が動き出すことがあります
法律を味方につける
- いじめ行為に対しては、損害賠償請求、告訴など、正当な手段があります
- 弁護士などの法律家に相談すれば、道が見えることも少なくありません
「いじめられる側にも責任がある」という考えに惑わされない
- どんな事情があっても、いじめは正当化されません
- 自分を責める必要はありません。あなたは悪くないのです
心と体の安全を最優先に
- 状況がひどい場合は、一時的に環境を変えることも選択肢
- 医療やカウンセリングを受けることも、立派な対処の一歩です
あなたが苦しみに耐えてきた時間は、無駄ではありません。
家族、公的機関、法律など、あなたの味方はたくさんいます。勇気を出して一歩踏み出すことで、状況は必ず変わっていきます。
もし一人で対応が難しいと感じたら、専門家や専門機関にご相談ください。
