現代では、SNS(Twitter/X、Instagram、Facebook、TikTokなど)が誰でも自由に情報を発信できる便利なツールとなっています。しかし、その一方で、SNS上での誹謗中傷やデマの拡散といった問題も深刻化しています。
今回は、SNSで誹謗中傷の被害に遭った際に取るべき対策や、法的な対応についてわかりやすく解説します。
SNS上の誹謗中傷とは?
SNS上での誹謗中傷とは、以下のような行為を指します。
- 特定の個人や団体を侮辱する投稿
- 根拠のない悪口やうわさの拡散
- 名誉を毀損するような画像・動画の投稿
- 嫌がらせを繰り返すリプライやDM
これらは、投稿者にとっては「軽い気持ち」でも、被害者にとっては精神的苦痛や社会的なダメージにつながる重大な問題です。
誹謗中傷を受けたときの初期対応
誹謗中傷を受けたら、まずは以下の対応をとりましょう。
証拠を保存する
誹謗中傷の投稿は、投稿者が後で削除してしまうことがあります。スクリーンショットやURL、投稿日時など、客観的な証拠を確実に保存しましょう。
SNS運営元に通報する
多くのSNSには「通報機能」があり、誹謗中傷や嫌がらせを報告できます。違反が確認されれば投稿の削除やアカウントの凍結などの対応がとられることがあります。
アカウントを一時的に非公開にする
被害が拡大している場合は、自身のアカウントを一時的に非公開設定にすることで、精神的な負担を軽減できます。
法的な対策
SNSでの誹謗中傷に対しては、民事・刑事の両面から法的措置を講じることが可能です。以下、それぞれのステップを紹介します。
発信者の特定:発信者情報開示請求
発信者情報開示請求とは、被害者がプロバイダに対して、発信者の特定にいたるための情報を開示するよう請求することができるものです。匿名のアカウントによって投稿された場合でも、法的手続きを通じて投稿者を特定することができます。
※この手続きは非常に専門的で、書類の作成や証拠の収集なども必要になるため、弁護士などの専門家の協力が不可欠です。
損害賠償請求(民事訴訟)
発信者が特定できた場合には、以下の損害に対して賠償を請求できます。
主な請求内容
- 慰謝料:精神的苦痛に対する賠償
- 弁護士等の費用の一部
- 名誉回復措置(謝罪広告の掲載など)
裁判手続きにおける弁護士と司法書士の違い
司法書士は140万円を超えない範囲でかつ簡易裁判所を管轄とする訴訟においてのみ、訴訟代理ができます。一方で弁護士は額にかかわらず訴訟の代理が可能です。また、弁護士は簡易裁判所に限らず地方裁判所から最高裁判所まで訴訟の代理が可能です。差押えなどの強制執行手続の代理は弁護士しかできません(少額訴訟債権執行の場合は司法書士でも可能です)。
一方、司法書士費用の方が弁護士費用より安いケースが多いです。SNSの誹謗中傷による損害賠償は一般的に弁護士に依頼するケースが大半です。
成功するためのポイント
- 誹謗中傷による「名誉毀損」や「プライバシー侵害」が認められる証拠
- 被害者がどのような損害を受けたかを示す資料(通院記録、収入の減少など)
慰謝料の相場は数百万円を超えることもあり、被害の程度によって異なります。
刑事告訴・被害届の提出(刑事手続)
悪質な誹謗中傷の場合、刑事責任も問われます。
該当する主な罪
- 名誉毀損罪:公然と事実を摘示して他人の社会的評価を下げた場合。
→ 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 - 侮辱罪(刑法231条):具体的事実に触れずに侮辱した場合。
→ 1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料 - 業務妨害罪(刑法233条):虚偽の情報を流すことで企業や個人の業務を妨げた場合。
→ 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
※2025年6月1日より刑法が改正され、「懲役」「禁錮」が廃止され、「拘禁刑」が新たに導入されます。
手続きの流れ
- 警察や弁護士に相談
- 被害届や告訴状を提出
- 捜査→加害者が特定されれば送検、起訴される可能性も
刑事事件として進めるには弁護士のサポートを受けることが推奨されます。
投稿の削除請求
加害者の特定とは別に、誹謗中傷の投稿自体を削除させることも重要です。
方法
- SNSの通報機能を利用する
- 弁護士を通じてSNS運営会社に削除請求を行う
このように、法的手続きは段階的かつ複雑ではありますが、適切な対応を取ることで権利を守ることが可能です。被害に気づいた段階で早めに相談することが、被害の拡大を防ぐ鍵となります。
誹謗中傷を防ぐには
どんな投稿をしても誹謗中傷を受けることがあります。誤った情報を流したりして誹謗中傷を受けるケースや、誤字脱字だけでも誹謗中傷を受けるケースすらあります。
そのため、SNSでの誹謗中傷は、完全に避けるのが難しい場合もありますが、以下のような対策を取ることで被害を最小限に抑えることが可能です。
個人情報の公開範囲を見直す
- 本名、住所、勤務先、子どもの学校名などの個人を特定できる情報を安易に公開しない
- 写真や動画の背景に自宅や通学路などが写り込まないよう注意
- プライバシー設定を活用し、投稿の公開範囲を「フォロワーのみ」に制限する
これらはストーカーや特定のターゲットになるリスクを下げる有効な方法です。
コメントやダイレクトメッセージの制限・監視
- 特定のキーワードを含むコメントを非表示にする機能(InstagramやYouTubeなどに搭載)を利用
- 匿名のアカウントからのDM(ダイレクトメッセージ)を制限またはブロック
- 定期的にコメント欄やメンションをチェックし、不審な投稿には即対応
特にフォロワー数が多いアカウントでは、モデレーションの仕組みを整えておくことが重要です。
炎上しやすい投稿を避ける配慮
- 政治・宗教・思想に関する投稿は慎重に
- 差別的な投稿をしない
- ジョークや風刺も誤解されやすい内容は避ける
- 批判的な意見を述べる場合は、冷静で建設的な言い方を心がける
発信者としての「表現の自由」は尊重されますが、読者の受け取り方を意識することが炎上リスクの回避につながります。
ネットリテラシーを高める
- 誹謗中傷に該当する投稿内容や、法律上のリスクについて学ぶ
- 万が一トラブルが発生した場合の相談窓口や対応手順を事前に把握しておく
- 家族や子どもとSNSの利用ルールについて話し合う
とくに未成年者や高齢者がSNSを使う場合は、家庭内での教育・ガイドライン作成が推奨されます。
企業・団体としての対策
- SNSポリシーや運用ガイドラインを策定
- 社員やスタッフに対する研修やマナー教育を実施
- 誹謗中傷を受けた場合の危機管理マニュアル(削除手順・報告経路など)を整備
企業アカウントが標的になった場合は、企業イメージや取引先への影響も懸念されるため、組織的な備えが不可欠です。
このように、誹謗中傷のリスクは日常的な意識と工夫によって、ある程度は予防・軽減できます。「何か起こってから」ではなく、「起こる前から」の対策を心がけることが大切です。
まとめ
SNSでの誹謗中傷は、誰にでも起こりうる現代的なトラブルです。相手が顔の見えない人であることを良いことに誹謗中傷をするような人間は、残念ながら一定数います。
そのため、被害を受けた場合には、証拠の確保・運営会社への通報・法的手続きなど、冷静に対応していくことが大切です。
一人で抱え込まず、専門家の力を借りてください。


