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【司法書士解説】子会社を作りたいときは?株式交付の流れをわかりやすく解説

商業登記

司法書士ライターのTです。

令和3年に会社法改正が施行されたことにより導入された株式交付は、子会社を作るための手続きとして、M&Aをはじめ、さまざまな手法として注目されています。本記事では、株式交付の流れについて解説します。

株式交付とは?

株式交付とは、株式会社が他の株式会社をその子会社等とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいいます。

つまり、ある株式会社が他の株式会社を子会社とするための手続きが株式交付です。
これまでは、子会社となる株式会社において募集株式の発行をしてもらい、その株式を取得することや、子会社となる株式会社の株式の譲受を受けるということが行われていました。
そこで子会社を作るためにできたのが株式交付という制度です。

株式交付により、より簡易的に子会社を作ることができるようになりました。

株式交付の流れ

ここでは、株式交付の流れについて解説します。

株式交付計画の作成

株式会社が株式交付をする場合には、株式交付計画において、次に掲げる事項を定める必要があります。

・株式交付子会社の商号及び住所
ここでいう株式交付子会社とは、株式交付親会社(株式交付をする株式会社)が株式交付に際して譲り受ける株式を発行する株式会社をいいます。つまり、子会社になるために株式を発行するのが「株式交付子会社」です。

・株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数の下限
この下限は、株式交付子会社が子会社となるだけの数でなければなりません。株式交付は子会社を作るための制度であるため、このような規制になっています。

・株式譲渡人への対価
まず、対価として株式交付親会社(株式交付をする株式会社)の株式を交付しなければなりません。そして、株式交付親会社が株式交付に際して株式交付子会社の株式の譲渡人に対して当該株式の対価として交付する株式交付親会社の株式の数又はその数の算定方法並びに当該株式交付親会社の資本金及び準備金の額に関する事項を定めます。
株式交付親会社以外の対価としては、例えば株式交付親会社の社債や金銭なども対価とすることができます。ただし、株式交付親会社(株式交付をする株式会社)の株式を交付しなければなりませんので、社債だけや、金銭だけとすることはできません。

なお、金銭などを対価とする場合は、株式交付計画に以下の事項を定めなければなりません。

当該金銭等が株式交付親会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法

当該金銭等が株式交付親会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法

当該金銭等が株式交付親会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのイに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのロに規定する事項

当該金銭等が株式交付親会社の社債及び新株予約権以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

株式交付子会社の株式の譲渡人に対する金銭等の割当てに関する事項

・株式交付子会社の株式の譲渡人に対する株式交付親会社の株式の割当てに関する事項
割当に関する事項です。株主に対しては、平等に割当てなければなりません。

・新株予約権譲渡人への対価
新株予約権者への対価は、株式譲渡人とほぼ同様です。金銭などを対価とする場合は、株式交付計画に追加事項が必要となるのも同様です。
また、新株予約権譲渡人に対しては無対価でも構いません。ただし、株式交付子会社にある新株予約権の譲受はしておきましょう。
株式交付子会社に残った新株予約権を行使されると、会社の親子関係が崩れてしまう恐れがあります。

申込期日
株式交付子会社の株式や新株予約権等の譲渡しの申込期日を定めます。

効力発生日
株式交付の効力は、効力発生日に生じます。
合併や株式交換と異なり、株主総会の承認が不要であるため、迅速にM&Aを実行できます(ただし、大量の株式を発行する場合は別途承認が必要)。

事前書類備え置き(事前開示)

株式交付親会社は、備置き開始日から効力発生日の後6か月間、上記で作成した株式交付計画の内容等を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければなりません。

株主総会の決議による承認

株式交付親会社は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、株式交付計画の承認を受けなければなりません。
ここでの株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行わなければなりません(特別決議)。

なお、株式交付親会社が対価として交付する財産の合計額が、株式交付親会社の純資産額の5分の1を超えない場合には、一定の条件を満たすことで株主総会の決議を省略できます(簡易組織再編)。ただし、同項に規定する場合又は株式交付親会社が公開会社でない場合は原則通り、株主総会の特別決議が必要となります。

債権者保護手続

株式交付は組織再編手続きの一種ですが、合併や会社分割等とは異なり、債権者異議手続は原則として不要です。本記事では手続きの解説を省略します。
なお、株式交付親会社が株式交付子会社の株主等に対して金銭などを交付する場合、債権者保護手続きが必要となります。

反対株主の株式買取請求

株式交付をする場合には、反対株主は、株式交付親会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます。

ここでいう「反対株主」とは、たとえば以下の株主が該当します。

・当該株主総会に先立って当該株式交付に反対する旨を当該株式交付親会社に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該株式交付に反対した株主
・当該株主総会において議決権を行使することができない株主

効力発生

株式交付は、株式交付計画で定めた効力発生に効力が生じます。
ただし、株式交付親会社が給付を受けた株式数が、株式交付計画で定めた「下限」に満たない場合などには効力発生日でも効力が生じません。

そのような場合、効力発生日を最大3か月まで遅らせる変更をすることができます。この変更は、取締役の決定や取締役会の決議でおこなうことができ、株主総会の決議は不要です。

事後書類備え置き(事後開示)

株式交付の効力発生日後遅滞なく、株式交付に際して株式交付親会社が譲り受けた株式交付子会社の株式の数その他の事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成しなければなりません。そして、株式交付親会社は株式交付の効力発生日から6か月間、その書面又は電磁的記録を本店に備え置かなければなりません。

株式交付の登記

株式交付を行った場合はその登記を申請しなければなりません。登記については後述します。

株式交付のメリット・デメリット

ここでは株式交付のメリット・デメリットを簡単に紹介します。

メリット・デメリット

【メリット】

✅ M&Aにも使える
✅ 買収会社の株主構成を維持しやすい
✅ スムーズな事業承継が可能

株式交付は子会社を作るためにできた制度です。そのため特にM&A事業承継に向いている制度です。承継を受ける株式会社を株式交付子会社とすることで、子会社化し事業を承継することができます。これからは、独自のスキルを持った会社を株式交付により取得し、事業承継を行っていくということも増えていくのではないでしょうか。


【デメリット】

❌ 完全子会社にはできない
❌ 株主構成の変化
❌ 株式会社以外のM&Aには使えない

特に、株式会社以外の会社・法人には利用できないのはデメリットです。株式会社の当事者になることができるのは株式会社だけであり、株式会社ではない会社や一般社団法人、医療法人、NPO法人などは株式交付の当事者となることができません。

株式交付の登記手続き

株式交付を実施する際には、株式交付親会社において登記の申請が必要です。

登記申請については、司法書士へ依頼するのが一般的ですので、ここではざっと解説します。

登記すべき事項

・資本金の額
株式交付親会社の株式を交付することで資本金が増えます。そのため、資本金の額の変更登記が必要です。
なお、株式交付親会社の自己株式のみを交付していた場合、資本金の額は増えません。

・発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数
株式交付親会社の株式を発行した場合、発行済株式総数が増加します。株式交付親会社の自己株式のみを交付していた場合は新たに株式を発行していませんので登記は不要です。

・新株予約権
対価として新株予約権の交付をする場合、新株予約権の登記も必要となります。

登録免許税額について

株式交付の登記の申請の際、増加した資本金の額の0.7%分の登録免許税がかかります。例えば1000万円増資した場合、登録免許税額は7万円になります。ただし0.7%した額が3万円に満たない場合、登録免許税額は3万円になります。

まとめ

いかがだったでしょうか。株式交付は子会社を作る制度であり、M&Aにおける柔軟な手法の一つとして活用できます。特に、公開会社が非公開会社を買収する際のスピーディーな手続きが特徴です。ただし、自社株式の価値や株主構成の変化といったリスクもあるため、慎重な検討が必要です。

登記手続きに関しては、株式交付計画書の作成など複雑な手続きが要求されます。具体的な株式交付の手続きについては専門家である司法書士などに相談しながら進めることをおすすめします。

今後、M&Aを検討している企業にとって、株式交付は有力な選択肢となるでしょう。

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