福岡の司法書士ライターTです。
今回は成年後見制度について、どのようなものなのか解説していきます。
成年後見とは、病気などで本人の判断能力が低下し、身上保護や売買などの取引を一人で行うことが難しい場合に、その親族などが本人に代わって本人の身上保護や取引を行う制度です。判断能力が低下した本人を保護するための制度です。
大きく法定後見制度と任意後見制度とに分けられます。
◆法定後見制度
現在、本人の判断能力が低下している場合において利用される制度です。本人の判断能力低下の程度に応じて、後見、保佐、補助に分けられます。
判断能力が最も乏しい場合に後見、次いで保佐、補助となります。
後見の場合は後見人、保佐の場合は保佐人、補助の場合は補助人が選ばれます。家庭裁判所が選ぶため、必ずしも希望の後見人等が選ばれるとは限りません。
①後見
後見の場合、本人は成年被後見人となり、後見人がつきます。成年被後見人は判断能力がない状態にあるため、本人が行う日用品の購入などを除き、ほぼすべて後見人が本人を代理しておこないます。
例えば、各種契約は本人に代わって後見人が代理して行います。判断能力がない状態では契約を行えませんから、後見人が代わりに行うものとされています。
また、後見人は本人の居住用不動産を売却する場合、家庭裁判所の許可を受けなければなりません。
これは、本人には判断能力がない点をみて、後見人が自らの利益のために本人の不動産を売却することのないよう、また居住用不動産を売られると本人が住む家がなくなってしまいますから、成年被後見人本人を保護するために家庭裁判所の許可が必要とされています。
②保佐
保佐の場合、本人は被保佐人となり、保佐人がつきます。被保佐人は判断能力が著しく低いですから、民法に定める行為を行うことについて保佐人の同意を得なければなりません。
【民法13条1項】被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
① 元本を領収し、又は利用すること。
② 借財又は保証をすること。
③ 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
④ 訴訟行為をすること。
⑤ 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
⑥ 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
⑦ 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
⑧ 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
⑨ 民法602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
⑩ 前各号に掲げる行為を制限行為能力者の法定代理人としてすること。
なお、保佐人に代理権をつけ、本人に代わり保佐人が契約などをするということも可能です。
③補助
補助の場合、本人は被補助人となり、補助人がつきます。被補助人は判断能力が低いため、上記の民法13条1項に定める行為のうち、補助人の同意を得なければならない旨の審判を受けた行為を行う場合については、補助人の同意を得なければなりません。
補助の場合、補助人の同意を得なければならない旨(同意権)の審判または代理権付与の審判のどちらか一方のみを受けることもできます。そして、代理権付与の審判のみを受けた場合、被補助人は何の制限もなく第三者との契約を締結することもできます。これは、被補助人は成年被後見人や被保佐人よりも能力が高いため、このような取り扱いが認められています。
◆任意後見制度
本人にまだ判断能力がある場合に、本人が選んだ人(任意後見人)との間で「もし私の判断能力が低下したら代わりにお願いしたい」と契約で決めておく制度です。この契約を任意後見契約といい、公正証書(公証人が作成する書面)によって行われます。
その後本人の判断能力が低下した場合、本人が選んだ人(任意後見人)が代わりに任意後見契約で定めた本人の事務を行います。
なお、本人の判断能力が低下した場合、本人が選んだ人(任意後見人)は家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任の申立てをする必要があります。この申し立てをしないと任意後見の効果は生じません。なお、任意後見監督人は家庭裁判所が選任します。
法定後見制度は法律(民法)に定められたものですが、任意後見制度は契約であるのが大きな特徴です。
法定後見とは異なり、本人が選んだ人が後見人になることができる点がメリットです。法定後見においては家庭裁判所が後見人を選任するため、本人が選んだ人ではない弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門家が選任される可能性もあります。
一方で、契約であるため、本人の判断能力がすでに低下してしまっている場合は任意後見制度を利用できません。その場合は法定後見制度を利用することになります。
似た制度として、民事信託(家族信託)があります。民事信託は家庭裁判所の関与なしに財産管理を行うことが可能であるのに対し、任意後見においては家庭裁判所の関与が必要です。
一方で、身上保護を行うこともできるのが任意後見のメリットです。つまり、任意後見人は本人の身の回りのお世話をすることができます。一方で民事信託は財産承継を目的とする制度であるため、身の回りのお世話は契約に含まれていません。
◆注意点
後見制度は本人のための制度ですので、ご家族の方自身の利益のために制度を利用することは認められていません。
我が国は高齢化社会となっており、成年後見制度の利用は今後ますます増えると見込まれております。一方で本来と異なった利用がされると、ますます後見制度が利用しづらいものになってしまう可能性もあります。
◆まとめ
民法で定められたものが法定後見制度
本人の能力により後見、保佐、補助がある
任意後見制度は本人と任意後見人との契約
今回は以上となります。
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