この記事投稿時点では8月ですが、受験界隈で8月といえば、司法書士試験における択一式の「基準点」発表がされる時期です。
そして、10月になれば司法書士筆記試験の合格発表を迎えます。そして、試験に合格した後、多くの人が悩むのが「どの司法書士事務所に就職するか」という問題です。
司法書士試験に合格すれば、司法書士として仕事を始めるための大きな一歩を踏み出したことになります。しかし、司法書士としてどのような経験を積めるのか、どのような業務を担当するのかは、就職する事務所によって大きく異なります。
せっかく国家資格最難関ともいえる試験に合格したのですから、単に「採用されたから」という理由だけで事務所を決めるのではなく、自分が将来どのような司法書士になりたいのかを考えたうえで就職先を選ぶことが重要です。
司法書士事務所選びのポイント
司法書士事務所によって仕事内容は大きく違う
司法書士事務所といっても、すべての事務所が同じ仕事をしているわけではありません。
不動産登記を中心に扱っている事務所もあれば、商業・法人登記を多く取り扱っている事務所もあります。また、相続案件を専門的に扱っている事務所や、成年後見、債務整理などを中心としている事務所もあります。
さらに、金融機関や不動産会社から多くの案件を受任している大規模な事務所と、地域の個人顧客を中心としている小規模な事務所では、仕事の進め方も異なります。
そのため、就職先を探す際には「司法書士事務所ならどこでもよい」と考えるのではなく、「将来的にどのような業務を経験したいのか」を明確にしておくことが大切です。
給与だけで司法書士事務所を選ばない
司法書士業界の給与は資格者であってもそこまで高くないのが現状です。しかし、給与の高い事務所があったからといって、それだけを基準にして決めることはおすすめできません。
司法書士は資格を取得しただけで一人前になるわけではありません。実際の案件を担当しながら、登記申請の流れ、必要書類の確認、依頼者との打ち合わせ、法務局とのやり取りなど、さまざまな実務を数年かけて身につけていく必要があります。
司法書士業界の未経験者は、合格直後は実務経験がほとんどない状態からスタートします。そのため、多少給与が高い事務所よりも、司法書士として必要な実務を幅広く経験できる事務所のほうが、長期的には大きな財産になる場合があります。
もちろん、給与や勤務時間、休日などの労働条件を軽視する必要はありません。重要なのは、給与と実務経験、働きやすさなどを総合的に比較することです。
どの程度仕事を任せてもらえるかを確認する
司法書士として成長するためには、実際に自分で仕事を経験することが重要です。
例えば、資格者として採用されたにもかかわらず、長期間にわたって単純な補助作業ばかりを担当するのであれば、期待していたほど実務経験を積めない可能性があります。
一方で、先輩司法書士の指導を受けながら、徐々に案件を任せてもらえる事務所であれば、実務能力を身につけやすくなります。
就職前には、「入所後はどのような仕事を担当するのか」「資格者としてどの程度案件を任せてもらえるのか」「先輩から指導を受けられるのか」といった点を確認しておくとよいでしょう。
事務所の雰囲気も重要
司法書士事務所への就職では、事務所の雰囲気も非常に重要です。
司法書士の仕事は、依頼者、金融機関、不動産会社、税理士、弁護士など、さまざまな人と関わりながら進める仕事です。また、事務所内でも補助者や他の司法書士と連携する必要があります。
そのため、職場の人間関係が悪かったり、質問や相談をしにくかったりする環境では、仕事を覚えること自体が難しくなります。
面接では、採用担当者だけを見るのではなく、可能であれば事務所内の雰囲気にも注目してみましょう。職員同士がどのようにコミュニケーションを取っているのか、質問しやすそうな環境なのかなどは、就職先を選ぶうえで参考になります。
参考記事:司法書士業界のブラックな実態とは?ブラック事務所が多い理由について
独立のため経営を学ぶ
司法書士は独立が前提ともいわれる職業です。
そのため将来的に自分の司法書士事務所を開業したいと考えている人は、単に登記実務だけではなく、事務所経営について学べる環境を選ぶのも一つの方法です。
司法書士として独立すると、司法書士業務だけをしていればよいわけではありません。独立しても自動的に仕事は来ませんし、忙しくなると経理などの事務が手薄になります。よって、顧客を獲得するための営業活動やホームページ、広告、紹介先との関係構築、職員の採用・管理、売上や経費の管理など、さまざまな業務が発生します。それらをすべて1人でこなしていかなければなりません。
そのため、将来独立を考えているのであれば、どのように案件を獲得している事務所なのか、どのような顧客層を持っているのかを観察することも勉強になります。
もちろん、独立を前提に就職先を選ぶ必要はありません。しかし、長期的なキャリアを考えるうえでは、自分が将来どのような働き方をしたいのかを考えておくことは重要です。
面接では「お互いの面接」と考える
司法書士試験に合格すると、「就職先に採用してもらえるか」という点ばかりを気にしてしまいがちです。
しかし、就職活動は事務所が合格者を選ぶだけの場ではありません。合格者側も、自分が働く事務所を選ぶ立場です。
面接では、給与や休日だけでなく、仕事内容、教育体制、残業の状況、資格者としての業務範囲など、気になることを確認しておきましょう。
入所してから「思っていた仕事と違った」とならないためにも、就職前にできるだけ情報を集めておくことが大切です。司法書士業界に強い転職エージェントもうまく活用しましょう。
まとめ
司法書士試験の合格はゴールではなく、司法書士としてのキャリアのスタート地点です。
最初に就職する司法書士事務所でどのような経験を積むかによって、その後の仕事の幅や専門性が変わる可能性があります。
だからこそ、「給与が高い」「有名な事務所」「自宅から近い」といった条件だけではなく、「どのような司法書士になりたいのか」という視点から就職先を考えることが重要です。
不動産登記を極めたいのか、相続を専門にしたいのか、会社・法人登記に力を入れたいのか、それとも将来的に独立したいのか。自分の目標が明確になれば、選ぶべき事務所も見えてきます。
司法書士試験に合格したことは、大きな可能性を手にしたということでもあります。その可能性を活かすためにも、焦って就職先を決めるのではなく、自分のキャリアを考えながら事務所を選びましょう。
