不動産流動化や証券化などのスキームに利用される特定目的会社ですが、その設立や運営には、一般の株式会社とは異なる機関設計のルールが存在します。
今回は、特定目的会社の役員に関する役員等の機関設計について解説します。
特定目的会社(TMK)とは?
特定目的会社(TMK)は、特別目的会社(SPC)の一つで、資産流動化法に基づき、特定の資産を保有し、その資産から生じるキャッシュフローを活用して資金調達を行うために設立される法人です。特定目的会社は資産を流動化するための器になります。
特定目的会社は、資産流動化の透明性や効率性を高めるために設計されており、投資家保護やリスク管理の観点から厳格な規制が課されています。
特定目的会社の機関設計の基本
特定目的会社においては、通常の株式会社と異なるルールが定められています。
特定目的会社の社員について
社員とは、株式会社でいう「株主」に相当する人のことをいいます。よって、株式会社における株主に近い権利があります。
特定目的会社の社員は、特定社員となります。
うち、優先出資を発行する特定目的会社のうち、優先出資を有する社員のことを優先出資社員といいます。
社員の責任
社員の責任は、その有する特定出資又は優先出資の引受価額を限度とされます。これは、責任が有限であることが原則ということです。株式会社における株主も有限責任です。
社員の権利
社員は、その有する特定出資又は優先出資につき以下のような権利を持ちます。
- 利益の配当を受ける権利
- 残余財産の分配を受ける権利
- 社員総会における議決権の行使(優先出資社員を除く)
特定目的会社の役員について
特定目的会社においての役員とは、取締役、会計参与及び監査役のことをいいます。このほか、会計監査人も設置されます。
特定目的会社における役員の設置ルールは以下のとおりです。
| 要件 | 設置義務 |
|---|---|
| 取締役 | 必須:1人または2人以上 |
| 監査役 | 必須:1人または2人以上 |
| 会計参与 | 任意 |
| 会計監査人 | 必須(ただし一定の要件があれば不要) |
このとおり、通常の株式会社よりも厳しいルールになっています。
一方で株式会社でも取締役は必須ですが、それ以外の役員は任意であることも多く、役員が取締役1人のみの株式会社もあります。
取締役
取締役とは、特定目的会社の業務を執行する役員です。「業務の執行」とは、活動を行うことです。ただし、特定目的会社は株式会社のような一般の事業(例:飲食店の経営、宅地建物取引業など)を行うことは認められませんので、株式会社と比べてやることは少ないです。
監査役
監査役は、取締役(会計参与設置会社においては、取締役と会計参与)の業務を監査します。取締役等を監視監督する役割です。
会計参与
会計参与とは、取締役と共同して、計算書類等を作成する役員です。公認会計士(または監査法人)、税理士(または税理士法人)でなければなれません。
実務上、設置されることはあまりありません。会計監査人とは異なり役員である以上、役員としての責任を負わされます。ちなみにこの責任は株式会社における会計参与でも同様です。
会計監査人
会計監査人とは、特定目的会社の計算書類及びその附属明細書を監査する人です。取締役、監査役や会計参与とは異なり役員ではありません。よって外部機関に近いです。ただし、外部機関である以上、会計のプロでなければならないため、会計監査人の資格は公認会計士又は監査法人(公認会計士の集まりによる法人)に限られています。
特定目的会社のガバナンス上の注意点
以下の点には注意が必要です。
- 実質的支配者が誰かが不明確になることの回避
⇒ 特定目的会社を利用したマネーロンダリング対策が求められます。定款認証時に実質的支配者となるべき者の申告が求められない以上、支配者の確認もされないため、十分注意しましょう。 - 内部統制が不十分になるリスク
⇒ 外部委託契約の管理体制の整備が重要です。 - 信頼性の担保
⇒ 投資家保護の観点から、信託スキームとの併用や第三者監査を組み込むなどの工夫も検討する必要があります。
まとめ
特定目的会社(TMK)の機関設計は、一般の株式会社に比べて規制が厳しくなっており、会計参与以外は必須とされます。そのため、特定目的会社ではなく株式会社を特別目的会社(SPC)として設立することも考えられます。
社員は株式会社でいう株主に近いものです。責任が出資等の限度となる点も株式会社と同様です。
役員については、株式会社に近いものです。特定目的会社は株式会社のような営業(例:飲食店の経営、宅地建物取引業など)を行うことはできないため、役割は少ないです。
特定目的会社において透明性・信頼性を確保するためには、適切な業務委託や監査体制の導入が不可欠です。実際の設計にあたっては、専門家と十分に相談することをおすすめします。


