「求人を出しても人が集まらない」「従業員が次々と辞めていく」「残った従業員の負担が増えている」――昨今ではこうした状況に悩む会社は少なくありません。
近年では、単純な採用難だけでなく、従業員の退職といったきっかけで会社の経営が行き詰まる「人手不足倒産」が増えています。
では、人手不足倒産に陥りやすい会社には、どのような特徴があるのでしょうか。本記事では、人手不足倒産の前兆と、早めに対策するためのポイントについて解説します。
人手不足倒産とは?
人手不足倒産とは、従業員の退職等によって必要な人材を確保できず、事業を継続することが難しくなった結果、倒産に至ることをいいます。
人が足りないだけで直ちに倒産するわけではありませんが、人手不足が長期化すると、受注できる仕事の量が減ったり、残った従業員の負担が増えたりします。そして、従業員の負担が増加するとさらに退職者が増え、さらに人手が不足するという悪循環に陥ります。
つまり、「人手不足」は単に人が足りないという問題ではなく、採用、離職、売上、利益、資金繰りなどの問題が連鎖して発生する経営上のリスクなのです。
人手不足倒産しそうな会社の特徴
従業員の退職が続いている
最も分かりやすい前兆の一つが、従業員の退職が続くことです。
特に、同じ部署から短期間に複数の社員が辞めたり、管理職や現場の責任者など、代替することが難しい人材が退職したりする場合は注意が必要です。
1人の退職だけなら会社経営に大きな影響がないケースも多いです。しかし、経験豊富な従業員が複数人退職すると、残った従業員に仕事が集中し、さらに退職者が増える可能性があります。
また、人を採用してもすぐ辞めてしまうケースも同じです。人が定着しない以上、既存従業員の仕事の負担が大きい状況が改善されず、その従業員の退職に繋がる可能性があります。
求人を出しても応募がほとんどない
求人を出しても応募者が集まらない状態が長期間続いている会社も注意が必要です。
採用できない状態が続けば、現在いる従業員だけで業務を回さなければなりません。その結果、残業時間が増えたり、休日を取りにくくなったりすることがあります。
そして労働環境が悪化すれば、現在働いている従業員まで退職してしまう可能性があります。
「採用できない」という問題を単なる採用担当者の問題として扱うのではなく、会社全体の経営課題として考えることが重要です。
一部の従業員に仕事が集中している
特定の従業員しかできない仕事が多い会社も、人手不足倒産のリスクがあります。
例えば、営業、経理、現場管理、顧客対応など会社の基幹業務ともいえる部分を1人の従業員に依存しているケースです。その従業員が退職すると、会社の業務そのものが回らなくなる可能性があります。
さらに、業務の属人化は、従業員本人にも大きな負担を与えます。「自分が休むと仕事が止まる」という状況では、本人が有給休暇を取得しにくくなり、結果として離職につながることもあります。
人件費を上げられない
人手不足を解消するためには、採用条件や給与水準を見直す必要があります。
しかし、売上が伸びていない会社の場合、従業員の給与を上げる余力がありません。
すると、
給与を上げられない⇒採用できない⇒既存従業員の負担が増える⇒退職者が増える
という悪循環に陥ります。
また、平均賃金は上昇傾向にあるため、人件費を上げられない場合は社員がよりよい条件の会社へと「転職」する可能性も高まります。
結果、売り上げがさらに減り、従業員の給与を上げる余力はどんどんなくなっていきます。
人手不足なのに仕事を断れない
人が足りない会社ほど、「せっかく来た仕事だから」と無理をして受注してしまうことがあります。
しかし、従業員の数に対して仕事量が多すぎると、従業員の長時間労働につながります。短期的には売上が増えても、従業員が疲弊して退職すれば、最終的には会社の生産能力そのものが低下します。
人手不足のときには、目先の売上高だけを見るのではなく、「その仕事を現在の人員で無理なく遂行できるのか」という視点も必要です。
人手不足倒産の前兆は「退職」だけではないという点
人手不足倒産の前兆として注意したいのは、従業員の退職だけではありません。
例えば、
- 残業が急激に増えた
- 有給休暇を取得する人が減った
- 求人広告をずっと出している
- 管理職が現場の作業まで担当している
- 採用条件を改善できない
- 仕事を受注しても納期を守るのが難しくなってきた
といった変化も重要なサインです。
特に危険なのは、これらの問題が同時に発生しているケースです。
「人が足りない」という一つの問題から、残業増加、そして離職・採用難、さらには売上減少・利益減少というように、複数の問題へ発展している場合、早急な対策が必要です。
人手不足倒産を防ぐには
人手不足倒産を防ぐためには、単純に求人を増やすだけでは十分ではありません。
まず重要なのは、現在いる従業員が辞めない環境を作ることです。給与や賞与だけでなく、業務量、休日、勤務時間、職場の人間関係、教育体制、福利厚生などについても見直す必要があります。
働きやすい環境をめざし、従業員の健康のための制度を設けたり、メンタルヘルスチェックを導入する企業もみられます。
また、特定の従業員に依存している業務については、複数の従業員が担当できるようにすることも重要です。業務マニュアルを整備したり、従業員同士で仕事を共有したりすることで、一人の退職によって会社全体が混乱するリスクを抑えられます。
さらに、業務そのものを見直すことも大切です。人を増やすことだけを考えるのではなく、ITやシステムを活用して効率化できる業務がないか検討することで、限られた人員でも事業を継続しやすくなります。
この時代、「辞めるのは裏切り行為」「最近の若い人はすぐ辞める」といったような古い考え方のままでは、いずれその会社はなくなると考えたほうが良いでしょう。
まとめ
人手不足倒産は、「突然会社が倒産する」という形だけで発生するものではありません。
従業員の退職、採用難、残業の増加、仕事の属人化、人件費の上昇など、小さな問題が積み重なり、最終的に会社の収益力や資金繰りを悪化させることがあります。
だからこそ、経営者は「たかが人手不足」と考えるのではなく、その人手不足が生じた段階から会社の状態を確認することが重要です。
- 従業員の退職が相次ぐ
- 採用できない
- 残業が増えた
- 人件費を上げる余裕がない
といった前兆が見られるのであれば、それは重要なサインかもしれません。
人手不足を単なる採用問題として放置せず、経営、労務、業務効率、収益構造まで含めて早めに対策することが、人手不足倒産を防ぐための第一歩となります。
