司法書士としての事業終了のお知らせ
すでにご存知のお客様も多くおられますが、さまざまな事情を考慮して検討した結果、当所では司法書士を辞める判断を下しました。2026年1月には「司法書士のすず事務所」としてスタートすべく準備をし、新しいカンバンもできていた矢先でした。
「せっかく難関資格を取ったのに、もったいなくない?」「そこまで準備をしたのに、なぜ辞めたの?」
会う人会う人毎回こう聞かれます。世間から見れば、司法書士は「安定した士業」「食いっぱぐれない仕事」というイメージがあります。確かに資格を取った当初は、私もそう思っていました。
しかし実際に仕事を続けていく中で、少しずつ違和感が大きくなり、最終的に私はこの仕事を離れる決断をしました。理由はいくつかありますが、特に大きかったのは「制約の厳しさ」と「業界の将来への不安」です。
私が司法書士を辞めた理由
司法書士は独立できる仕事です。「自分の裁量で働ける」「自由な働き方ができる」そんなイメージを持っている人も多いと思います。私もそうでした。
でも、実際はかなり違います。
業務範囲の強い制限
司法書士には明確な業務範囲の線引きがあります。
少しでも境界を越えれば、違法行為になりかねない世界です。
依頼者から
「ついでにこれもお願いできませんか?」
と聞かれても、
- それは弁護士の業務ではないか
- 税理士法に触れないか
- 行政書士の業務ではないか
と、常に気にしなければなりません。特に、税金の相談は非常に多いです。
目の前の人を助けたいと思っても「それはできません」と言わなければならない場面が多く、この職能の壁は、想像以上にストレスでした。
ならば「税理士の資格も取ればいい」と思われるかもしれませんが、税理士試験の難易度は国家資格の中でもトップクラスです。司法書士の仕事をしながら税理士の資格を取得するのは至難の業と言わざるをえません。
手続きは増えるのに、裁量は増えない
法律や制度はどんどん複雑になり、本人確認や書類管理の義務も年々厳しくなっています。ミスは許されず、責任は重い。にもかかわらず、業務の進め方に大きな自由があるわけでもありません。
言ってしまえば、
責任は重いのに、できることは狭い
このバランスの悪さが、次第にしんどくなっていきました。
「ありがとう」よりクレームのほうが多い
司法書士の仕事は、基本的にトラブルの入口か、後処理に関わることが多いです。
- 相続でもめている
- お金の問題がある
- 家族関係が複雑
- 会社がうまくいっていない
そんな場面に関わることが多いため、依頼者の感情も不安定になりがちです。
こちらがどれだけ丁寧にやっても、
「もっと早くできたんじゃないの?」
「なんでこんなにお金がかかるの?」
と言われることもあります。感謝してもらえる仕事でもありますが、サービス業である以上、精神的に消耗する仕事でもありました。
業界に対する不信感、不安感
正直、これが決定的でした。
仕事は増えているのに、明るい感じがしない
相続登記の義務化などで、業務量はむしろ増えています。それなのに、業界全体に成長している雰囲気がない感じがあり、むしろ閉塞感があります。
理由はいくつかあります。
- 報酬は価格競争にさらされやすい
- 大手やネット系事務所への集中
- IT化・自動化の進展
- 若手の将来像が見えにくい
「10年後、この業界は今より良くなっているだろうか?」
と考えたとき、私は自信を持って「はい」と言えませんでした。
積み上がるキャリアを感じにくい
経験は増えるのに、それが収入や働きやすさに比例して伸びる感覚が薄いのもつらいところでした。
そして「司法書士は20年経験して中堅」と言われるような業界です。専門職である故、仕方ない面もありますが、それならあんなに難関試験にする意味も薄れると思いました。
この構造の中で何十年も働き続ける自分を想像したとき、正直ワクワクできませんでした。
業界のリアルと将来
これについてはかなりネガティブな内容を書くことになると思われますので、近日中に「のすず事務所」のnoteにて公開します。有料記事となる見込みですので、投稿した際は興味のある方のみご覧ください
2月10日追記:対象記事はこちら
司法書士の仕事を嫌いになったわけではない
誤解してほしくないのは、司法書士という仕事そのものを否定したいわけではない、ということです。
- 人の人生の大事な場面に関われる
- 法律を使って誰かを助けられる
- 専門職として信頼してもらえる
素晴らしい仕事だと思います。向いている人にとっては、やりがいのある一生の仕事になるはずです。
ただ単に私は、
「司法書士という仕事、司法書士業界に向いていなかった」
それだけの話です。
辞めたのは逃げではなく、選択
周りからも「もったいない」と言われました。でも、
- このまま続ける違和感
- 業界の将来への不安
- 働き方への息苦しさ
これらを無視して続けるほうが、私にとってはリスクでした。
それでも辞めたことで、
- できることの幅
- 働き方の自由
- 将来への想像力
は大きく広がりました。
なお、司法書士を辞めることに対して同期や他の司法書士からは散々な言われようでした。
もうここでまとめて言わせてもらいますが、「ならばあなたは私の人生の責任を取ってくれるんですか?」
コミュ力の話をしますが、「自分が話す能力」も確かに重要なコミュニケーション能力です。しかし同じくらい重要なコミュ力として「相手の話を聞く能力」も必要です。
司法書士には自分の意見を一方的に相手に押し付ける人が多く、「自分が話す能力」に長けているとは思います。しかし、一方的に話すばかりで「相手の話を聞く能力」が低い人が多すぎます。相手の話を聞くことができない以上、司法書士はコミュ力が低い人が多すぎると思います。
まとめ
私が司法書士を辞めた理由はシンプルです。
とにかく向いていなかった。
資格はゴールではなく、ただの選択肢の一つ。
合わなければ、降りるのもまた一つの正解だと、今は思っています。
そしてこれは、司法書士に限らず、どんな仕事にも言えることかもしれません。
※今後のブログについて
本日時点では「取適法」に関する記事のストックがありますが、それ以外の法律系の記事はほぼ投稿しません。今後はIT関係を中心に幅広く扱うブログとして運営してまいります。
なお、ライターとして「法律系記事」の作成ご依頼は当面の間受け付ける予定です。
