会社を設立したいと考えたとき、司法書士などの専門家に依頼する方法だけでなく、自分で手続きを進める方法もあります。法人設立の手続きを自分で行えば、専門家への報酬を節約できるため、設立費用を抑えたい方にとって有力な選択肢となります。
しかし、法人設立には定款の作成や認証、登記申請など、いくつかの専門的な手続きが必要です。必要書類に不備があれば、修正や再提出が必要になることもあります。
この記事では、法人設立を自分で行う方法について、手続きの流れ、費用を解説します。
この記事は、自分で手続きをすることを推奨するものではありません。特別な事情がない限りは司法書士等の専門家へ依頼することをお勧めします。
法人設立は自分でできる?
法人設立は、専門家に依頼しなくても自分で行うことができます。会社法や法人法などの法律に従って定款や必要書類を作成し、法務局に登記申請を行えば、会社を設立することが可能です。
会社設立の手続きでは、司法書士に依頼するのが一般的です。しかし、法律上必ず司法書士に依頼しなければならないわけではありません。
自分で法人設立を行う場合は、まず設立する会社の種類を決め、その会社に必要な手続きを把握することが重要です。
自分で法人設立を行う流れ
ここでは会社を設立する場合を例にして流れを解説します。
(1)法人の基本事項を決める
法人設立の最初のステップは、法人の基本事項を決めることです。
具体的には、会社名である商号・名称、本店所在地、目的、資本金、事業年度、役員構成などを決定します。
商号や名称は原則として自由に決められますが、同一の所在地に同一の商号・名称を持つ会社・法人を設立することはできません。また、他社の商標権などを侵害する名称を使用すると、後々トラブルになる可能性があります。
事業内容となる「目的」についても慎重な検討が必要です。設立後に行う事業を踏まえ、適切な内容を定めなければなりません。営業許可などの許認可が必要な事業では、許認可の要件を満たす事業目的の記載が求められることもあります。
(2)定款を作成する
会社・法人の基本事項が決まったら、定款を作成します。定款とは、会社の組織や運営に関する基本的なルールを定めた書類です。
例えば株式会社の場合、商号、本店所在地、事業目的、設立に際して出資される財産の価額など、会社法で定められた事項を記載する必要があります。
合同会社でも定款の作成は必要ですが、株式会社とは記載事項や手続きの仕組みが異なります。
株式会社では、原則として公証役場で定款の公証人の認証を受けなければなりません。一方、合同会社では定款の公証人の認証は不要です。
(3)資本金を払い込む
定款の作成などが終わったら、出資者が資本金を払い込みます。
会社設立前は会社名義の銀行口座を開設できないため、発起人や代表者などの個人名義の口座を利用して払い込みを行います。
払い込みが完了したら、通帳のコピーやインターネットバンキングの取引明細など、出資の事実を確認できる資料を準備します。これらの資料は、登記申請時に必要となる払込証明書などの作成に利用します。
インターネットバンキングであれば、払い込みをした履歴が分かるスクリーンショットを用意しておきましょう。
株式会社の場合、かつては資本金が300万円以上必要でしたが、現在は1円以上でも株式会社を設立できます。
しかしながら、実際には少なくとも100万円は用意し、事業の運転資金や取引先からの信用なども考慮して資本金の額を決めることが大切です。
(4)設立の登記を申請する
定款の認証を受け、資本金の払い込みをしたら、法務局に提出する登記申請書や添付書類を準備します。
必要書類は会社の種類や役員構成などによって異なりますが、株式会社では、次のような書類が必要となります。
- 設立登記申請書
- 定款
- 発起人の同意書
- 取締役の就任承諾書
- 印鑑証明書
- 本人確認証明書
- 払込みを証する書面
- 資本金の額の計上に関する証明書
- 印鑑届出書
- 印鑑カード交付申請書
印鑑届や印鑑カード交付を受けるかどうかは法律上は任意ですが、届出しないとかなり不便なため、どちらも届出しておきましょう。
法務局のウェブサイトでは、商業・法人登記に関する申請書様式や記載例が公開されています。自分で法人設立を行う場合は、これらの資料を参考にしながら書類を作成するとよいでしょう。
必要書類がそろったら、本店所在地を管轄する法務局に設立登記を申請します。
申請方法には、窓口への提出や郵送のほか、要件を満たせばオンライン申請もあります。
登記申請では、登録免許税を納付する必要があります。申請書や添付書類に不備がある場合には、法務局から補正を求められることがあります。
登記申請を行った日が会社の設立日となるのが原則です。そのため、設立日を特定の日にしたい場合には、申請日をあらかじめ調整しておく必要があります。
登記が完了すれば、正式に会社が生まれたことになります。
(5)税務署に届出を行う
設立が完了したら、税務署に書類(法人設立届出書、源泉所得税や消費税関係の届出書)を提出しなければなりません。
また、青色申告をする場合の青色申告書の承認の申請など、上記以外の書類も必要となる場合があります。
自分で法人設立を行う場合の費用
法人設立を自分で行う大きなメリットは、専門家への報酬を節約できることです。ただし、自分で手続きを行う場合でも、法律で定められた税金などは発生します。
株式会社と合同会社では、主に定款認証の費用と登録免許税が異なります。
株式会社の登録免許税額は、資本金の額の0.7%で、最低額は15万円です。合同会社の場合も資本金の額の0.7%ですが、最低額は6万円となります。
株式会社では、このほかに定款認証の手数料(1万5,000円~5万円)や定款の謄本などに関する費用が発生します。紙の定款を作成する場合には、原則として収入印紙代4万円も必要です。
合同会社は定款認証が不要であり、登録免許税の額も安くなりやすいため、株式会社よりも設立費用を抑えやすい仕組みになっています。
なお、定款認証の手数料などは資本金や設立条件によって異なります。実際に設立する際には、最新の公証役場や法務局の案内を確認しましょう。
会社以外の法人の場合は、法人の種類によって費用は異なります。この記事では、その詳細を省略しますが、法人によっては当ブログ内で解説している記事もありますので、ブログの検索機能をご利用されたい。
自分で法人設立を行うメリット
自分で法人設立を行う最大のメリットは、専門家への依頼費用を節約できることです。設立に必要な書類を自分で作成し、申請まで行えば、専門家に支払う報酬を削減できます。
また、会社の仕組みや登記制度について理解を深められる点もメリットです。自分で定款を作成することで、会社の事業目的や機関設計などについて考える機会が得られます。
特に、設立する会社の構成がシンプルで、必要書類の作成に十分な時間を確保できる場合には、自分で手続きを進めることも選択肢となります。
自分で法人設立を行う場合の注意点
自分で法人設立を行う場合、手続きの調査や書類作成に時間がかかることがあります。
特に登記申請書や添付書類に誤りがあれば、補正が必要となり、予定していたスケジュールに影響する可能性があります。事業開始日や取引先との契約日が決まっている場合には、余裕を持って準備することが大切です。
また、会社を設立すれば手続きがすべて終わるわけではありません。設立後には、税務署や都道府県・市区町村への届出、社会保険の手続き、従業員を雇用する場合の労働保険関係の手続きなどが必要になることがあります。
さらに、会社設立時の定款や役員構成の決め方によっては、将来的な経営や資金調達に影響する場合もあります。単に登記を完了させるだけでなく、設立後の事業運営も見据えて準備することが重要です。
まとめ
法人設立は、司法書士などの専門家に依頼せず、自分で手続きを行うことも可能です。自分で設立すれば専門家への報酬を節約できますが、定款の作成や登記申請書の準備など、一定の知識と時間が必要になります。
特に、株式会社と合同会社では設立手続きや費用が異なるため、それぞれの特徴を理解したうえで選択することが大切です。
また、法人設立後には税務や社会保険などの手続きも発生します。設立登記だけでなく、その後の事業運営まで見据えて準備を進めましょう。
自分で法人設立を行うことに不安がある場合や、複雑な会社設計を予定している場合には、司法書士などの専門家に相談することも有効な方法です。費用と手間のバランスを考え、自分の状況に合った方法を選択しましょう。
